週刊 奥の院 3.25

■ 文 小泉武夫  絵 黒田征太郎 
『土の話』 石風社
 1300円+税
 小泉は醗酵学・食文化論で著名な人。1943年福島県小野町の造り酒屋に生まれる。福島第一原発40キロ圏内。
 黒田は09年から北九州で活動。
 話は、フクシマの「土」が阿武隈弁で人間文明を告発。黒田の絵と字、大迫力。

……
俺はよ、
海を見ながら暮してきた土だ。
ながめはいがったし、
空気も水もうめがったし、
お天道さまもまぶしかったなあ。
俺ばっかりでねくて、
まわりで生きてるやづめらも
みんなうきうきしてよ、
機嫌よぐ暮してたんだわい。

「俺」は草や木に包まれ、虫や鳥が集まって、「とでも気分いがった」。
人間どもは「俺」を耕して食べものをつくる。「それもいがっぺ」と思っていた。家や学校をつくり、「それも仕方あんめ」と。人間どもはだんだん欲張ってきた。

……
道路つぐって車走らせっぺし、
煙突ついだ工場たでっぺし
発電所つぐっぺしの
やり放題になったんだわい。
いやはやそのおかげでよ、
空気はよごれっぺし
水はにごっぺしでよ、
虫めらもヤマドリもウサギらも
みんなコソコソって
どっかに逃げでしまったんだわい
そんなごといっぺ見てんだ俺はよ、
「人間めら、
己ばっかり得すっこどやっでだら、
そのうぢきっどばぢあだってよ、
ほえづらかぐがら見ででみろ」
って思っでた。

 人間どもは放射能という「目に見えね悪魔」をぶっかけた。「おっかね、おっかね」と逃げていった。草は痩せ、虫もヨタヨタ。
 ところが、「俺」の体の中には「土壌微生物」がいて、放射能を分解してくれる。
 小泉は本の中で「10年ぐらいで」と書いている。

……
そうすっとない
こごにはまた草や木が繁ってよ、
花も咲いで鳥の囀りも帰ってくっぺで。
人間どももまた戻ってくる。土も木も生き物もみんな大切にする、いっしょに暮して行こうと言うだろう。
「んだんだ。
こりねでまだ放射能なんて
いじりまわしたらよ、
今度こそ何もかも終わりだもんない。
それししてもよ、目に見えねおっかね放射能をよ
目に見えね生きものたぢが
やっつげて消してしまんだがらよ、
まあ人間どものやってることなんざあ、
ちっち、ちっち(小さい、小さい)」って言って返すべ。

(平野)
4月のイベント
■ 「土橋としこ展覧会  お茶、はいりました。」 4.12(金)〜21(日) 2Fギャラリースペース
「3月に3年ぶりの新しい絵本「おちゃのじかん」佼成出版社)が、出版されたのを記念してと言いますか、やりたい場所もみつかったし、ナイスタイミング! とばかりに13年ぶりの展覧会をすることにしました。いろんなお茶や珈琲、あらゆるお茶の時間にまつわる話やものを描きます。どうぞいらして下さいませ。」