5.20
いよいよ、本日。
■ 西岡研介・松本創 『ふたつの震災 [1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』 講談社 1500円+税
序章 神戸からはじまった
第1章 海辺の町をさまよう心 宮城県名取市
第2章 何もなくなった町から 岩手県陸前高田市
第3章 原発に奪われた故郷 福島県双葉郡楢葉町
第4章 東北の怒りに向き合う
第5章 被災地取材500キロメートルの記録
終章 1・17の神戸へ
著者は共に元神戸新聞記者、現在フリー。阪神・淡路大震災取材から十数年ぶりの「ふたりの震災報道」。
(西岡) この1年間、私たちを東北の被災地に駆り立てていたものは、阪神・淡路大震災から「逃げた」、あるいは「何も学べなかった」という後悔の念だった。しかし、たった1年、それをはるかに凌ぐ大災害を取材したところで、十年以上も抱え続けていた悔恨は到底消えるものではない。また、今後ますます明確になるであろう阪神・淡路大震災と東日本大震災との「災害の質」や「復興の形」の違いも、1年やそこら取材したところでわかるものでもない。それを改めて思い知らせてくれたのが、足元で泥だらけになっているブーツだった。……
大震災発生から1年目、西岡は名取市の追悼行事に参加した。中学校の校庭には神戸から贈られた竹灯籠に入ったろうそくが並べられていた。校庭に一歩踏み出したとたん、足を取られる。校庭を覆っているヘドロは雪を吸ってぬかるみになっている。泥まみれになったブーツは1年前とまったく同じ。
松本はその日陸前高田の追悼式。大船渡の人たちと新しい大浴場に。
(松本) 陸前高田へ来ると、いつも慌しい。会いたい人や見ておきたい場所が、訪れるたびに増えていくからだ。
縁をいただいたのだと思う。
古臭くありきたりな言葉を私はあえて使いたい。濫用され、陳腐化し、口にするのも恥ずかしくなってしまった「絆」や、見えない相手に身勝手で不確かな善意を押しつけるような「つながり」ではなく、顔の見える具体的な関係を一対一で取り結ぶこと。それを表す言葉は、やはり「縁」がふさわしい。
(平野)
◇ 【海】のベストセラー(5.16集計)分より。
第1位は児童書。
ジョーン・G・ロビンソン 作・絵 小宮由 訳 『テディ・ロビンソンの誕生日』 岩波書店 1500円+税
イギリスの幼年童話。著者(1910〜88)がわが子のために書き描いた作品。
主人公は熊のぬいぐるみ。
大きくて、だきごこちのいい、ひとなつっこいくまのぬいぐるみです。デボラという小さな女の子のもので、毛はうす茶色、それに、目もやさしい茶色をしていました。……
本邦初訳、続刊2冊。夏と秋には出ます。
2 今野敏 『ペトロ』 中央公論新社 1600+税
3 金井美恵子 『ページをめくる指』 平凡社 1300円+税
4 小林信彦 『非常事態の中の愉しみ』 文藝春秋 1700円+税
5 佐藤雅美 『夢に見た娑婆 縮尻鏡三郎』 文藝春秋 1600円+税
大沢在昌、東野圭吾、三浦しをん、と続く。