週刊 奥の院 3.10

■ 倉田喜弘 『幕末明治見世物事典』 吉川弘文館 3000円+税 
 生人形、エレキテル、外国演芸、紙腔琴、水晶宮、西洋眼鏡、天井渡り、のろま人形、八人芸……。名称だけでどんな芸・見世物なのか想像できない。
 本書で紹介する見世物は、ペリー来航の頃から明治末年までに限る。

……(見世物)幕末期は、日本を取り巻く国際情勢にはさほど影響を受けないが、文明開化を迎えると様相は一変する。すなわち、電信、電話、ガス器具をはじめ、西洋の器物が現れてくる。また銀座煉瓦街が完成し、汽車や自転車、ピアノや蓄音器、さらにパノラマ、博覧会、高層建築物などが人々の心を捉える。
 これら明治の見世物は、日本人の見聞を広め、あすの生活を夢見る具体像を提示し、世界を意識するのに大きな役割を担った。いきおい個人の技能やマニュファクチャーに依存してきた旧来の見世物は、徐々に「創造的破壊」の道をたどる。……

 明治の規則に照らすと、東京スカイツリーは「見世物」に該当。明治24年10月警視庁「観物場取締り規則」第1条第2項「大廈(だいか)高楼遊覧ニ供スル建造物」。
 明治10年、電話が宮内省と工部省間で試験。翌年浅草花屋敷では一般客に見せられた。記者も「拝見したい」と取材を願い出た。
 同じく電話が京都の博覧会で御所に架設され、新聞社「見物にお出(いで)やす」と推奨している。電話は「見世物」だった。
 見世物・人物101項目。図版多数だが、この史料集めは困難な作業だったそう。
 著者は1931年大阪生まれ。NHK退職後、芸能史研究。著書多数。 

◇ ヨソサマのイベント 
■ 第七回サンボーホール ひょうご大古本市  3.23(金)〜25(日) 10:00〜19:00(最終日は18:00まで)
神戸三宮サンボーホール  主催 兵庫県古書籍商業組合 078−341−1569
  24日(土) 14:00より 田辺眞人講演会 「神戸の歴史と平家物語源平合戦の歴史地理〜」  
 25日(日) 11:00〜 14:00〜 「昔なつかしの該当紙芝居」

◇ 雑誌記事
■ ダヴィンチ』4月号  (メディアファクトリー 467円+税)より。
「没後7年 中島らもの本棚」 写真 松原正武 
『ほんまに』第13号の特集で「中島らもの書棚」を撮影・紹介してくれた写真家。さなえちゃんのインタビューもあり。
東日本大震災から一年 いま、僕らにできること」 被災地で踏ん張るひと、遠く離れていても支援を続ける人。
(平野)