週刊 奥の院 2.29

■ 内澤旬子 『飼い喰い  三匹の豚とわたし』 岩波書店 1900円+税 
 旬子様であらせられる。皆の者、頭が高い!
“食”は旬子様の大きなテーマのひとつ。『世界』連載。
(はじめに)より。

……これまで世界各地の屠畜の現場を取材して、家族で一頭の羊を屠り分け合って食べるところから、一日四千頭の牛を屠畜する大規模屠畜まで、数多の家畜の死の瞬間を見てきた。
 彼らがかわいそうだという感情を抱いたことはない。彼らの死骸を食べることで、私たち人間は自らの生存を支える。それは自明のことだからである。しかし取材をするうちに、これらの肉は、どのようにして生まれ、どんなところで育てられ、屠畜されるに至るかに、興味をおぼえるようになった。
 私たちは何を食べているのだろうか。……

 豚小屋を建て、受精から立ち合い、三種の豚を育て、屠畜し、そして食べるところまで記録・観察。また、豚の飼育法、店頭に並ぶまでの養豚農家、飼料会社、獣医、屠畜場、精肉、流通業者など、消費者の口に入るまでを取材。戦後60年で、飼育法、肉の価格、需要などが大きく変化した。豚舎はコンピュータ管理、品種改良もある。

……しかし、豚は豚である。今も昔も変わらない。飼えばかわいらしく愛らしく食べれば美味しい。
 日本で飼育され、出荷され食べられていった、すべての豚たちに、この本を捧げる。

目次
見切り発車  三種の豚  システム化された交配、人工受精  分娩の現場で  そして豚がやって来た  餌の話  豚の呪い  やっぱり、おまえを、喰べよう。  屠畜場へ  三頭の味  震災が
 三頭の豚、名前は、伸・夢・秀。飼うことを決めて、顔を合わせた男性たちに名前をもらっていいか声を掛けまくった。ちょうど3人の人が、どうぞと言った。
http://kemonomici.exblog.jp/page/2/
(平野)