人文・社会

牛を屠る


 ■『牛を屠る』佐川光晴解放出版社 1500円+税
 「ここはおめえみたいな奴の来る所じゃねぇっ!」怒鳴られた初日そして……牛の上にも十年。牛を屠って働く悦びを、私は得た。(帯より)
 著者は1965年生まれ、北海道大学法学部卒。出版社を1年で辞め、90年大宮の食肉会社に入社、屠畜に従事。2000年、その日々を綴った小説『生活の
設計』で新潮新人賞
 怒鳴られて以来、自分が「おめえみたいな奴」でないことを証明し続けてきたが、受賞と引き換えに働けなくなるのでは、と危惧。しかし、会社内はO−157発生以来、作業場の衛生管理や社員の健康管理など、管理職が慣れない仕事で体調を崩したり、定年退職もあったり、さらに先輩が辞めたり、と混乱。二足のわらじで頑張るが、負担が重く、ついに01年退社。
 作業初日。
 「最初の豚が顔を出したとたん、台の上のおじさんが豚の耳を掴んでこめかみにスタンガンを当てた。『グァッ!』という呻き声と共に豚は四肢を突っ張り、五十センチほどの段差を落下した。その刹那、下にいた男がナイフを一閃すると豚の胸が大きく裂かれて血が噴出した。ショックで覚醒した豚はこちらに向かうベルトコンベアの上を海老反りになって何度も跳ねた。血が飛び散り、はみ出した腸がうねっている。しかし十秒もすると痙攣を起こして、豚は動きを止めた。」
 生きた牛や豚を叩き、血を抜き、皮を剥ぎ、内臓を出し、食肉にする。荒っぽい、危険な、また熟練を要する作業だ。偏見や差別もある。でも、われわれは食わねばならない。
 著者、デビュー作が三島賞候補他、芥川賞は5回も候補になっている。賞をやる気がないならノミネートすんなと思う。芥川賞は新鋭にだから、特に思う。
 (平野)ちなみに、今回の芥川賞直木賞予想、またもやはずしました。私、本命には賭けません。


 ■『牛を屠る』佐川光晴解放出版社 1500円+税
 「ここはおめえみたいな奴の来る所じゃねぇっ!」怒鳴られた初日そして……牛の上にも十年。牛を屠って働く悦びを、私は得た。(帯より)
 著者は1965年生まれ、北海道大学法学部卒。出版社を1年で辞め、90年大宮の食肉会社に入社、屠畜に従事。2000年、その日々を綴った小説『生活の
設計』で新潮新人賞
 怒鳴られて以来、自分が「おめえみたいな奴」でないことを証明し続けてきたが、受賞と引き換えに働けなくなるのでは、と危惧。しかし、会社内はO−157発生以来、作業場の衛生管理や社員の健康管理など、管理職が慣れない仕事で体調を崩したり、定年退職もあったり、さらに先輩が辞めたり、と混乱。二足のわらじで頑張るが、負担が重く、ついに01年退社。
 作業初日。
 「最初の豚が顔を出したとたん、台の上のおじさんが豚の耳を掴んでこめかみにスタンガンを当てた。『グァッ!』という呻き声と共に豚は四肢を突っ張り、五十センチほどの段差を落下した。その刹那、下にいた男がナイフを一閃すると豚の胸が大きく裂かれて血が噴出した。ショックで覚醒した豚はこちらに向かうベルトコンベアの上を海老反りになって何度も跳ねた。血が飛び散り、はみ出した腸がうねっている。しかし十秒もすると痙攣を起こして、豚は動きを止めた。」
 生きた牛や豚を叩き、血を抜き、皮を剥ぎ、内臓を出し、食肉にする。荒っぽい、危険な、また熟練を要する作業だ。偏見や差別もある。でも、われわれは食わねばならない。
 著者、デビュー作が三島賞候補他、芥川賞は5回も候補になっている。賞をやる気がないならノミネートすんなと思う。芥川賞は新鋭にだから、特に思う。
 (平野)ちなみに、今回の芥川賞直木賞予想、またもやはずしました。私、本命には賭けません。