三都版元、新刊揃い踏み。

 中央ご案内カウンター南側の柱回り、その西面に集まるのは、京阪神三都の小出版社。京都・編集グループ〈SURE〉、大阪・編集工房ノア、神戸・みずのわ出版。このたび新刊揃い踏み。
 ■編集グループ〈SURE〉 鶴見俊輔さんの新刊『不逞老人』(河出)のジャケット写真、ここの人たちだと思うが……。 
 『ぼくは村の先生だった――村が徳山ダムに沈むまで』 大牧冨士夫 1500円+税
 1928年岐阜県徳山村生まれ。15歳で国民学校助教員、その後、少年通信兵、郵便局員、大学生、業界紙記者を経て、35歳で村の教員に。巨大ダム建設計画で、故郷がなくなる、思い出が消えるという心情的なものだけでなく、補償交渉、離村という現実的問題が起きる。著者は村の歴史を掘り起こす作業を続ける。
 『ダンテは世界をどう描いたか 新訳「神曲地獄篇」と、その解説』 山田慶兒 3200円+税
 科学史研究。「中世ヨーロッパの宇宙論と自然観」「自然現象の鋭い描写」に興味を抱くが、既存の翻訳に満足できず、みずから原文に挑んだ。
 ■編集工房ノア 関西文学の砦。神戸の作家ふたり。
 『アダンの花』 池間久志 1900円+税
 鹿児島県徳之島出身。南の島の自然と人。
 『正之の老後設計』 三田地智 2000円+税
 1929年大阪生まれ、神戸エルマール文学賞事務局長。87歳の弁護士・正之、モデルは夫らしい。
 ふたり、増えた。
 『告白の海』 柏木薫 2000円+税
 『ミカン水の歌』 森榮枝 2000円+税
 ■みずのわ出版 ひとり出版社。4月から6月まで2点ずつ新刊、秋にも強力新刊予定あり。
 『ほんの昨日のこと 余録抄2001−2009』 池田知隆 1500円+税
 01年から毎日新聞論説委員(大阪)、09年3月定年退職。土日を中心にコラム「余録抄」を担当。21世紀初頭の10年をコラムで振り返る、といっても、大きなニュースや事件ではなく、小さな「時代の風」のようなできごとを綴る。例えば、03.6.15は、書店員から牧師に転進した人の話。
 (平野)