業界本ではありません。

大不況に本を読む


■『大不況には本を読む』 橋本治中央公論新書ラクレ 740円+税
 業界本ではありません。「人間のあり方に立脚する」文芸関係者として、現実生活にもの申すのです。
 産業革命はそれまでの世界のあり方を変えてしまった、日本は開国して先進国になったが、150年たったら、それも行き詰った、「近代を見直すべき」と。「世界のあり方」を前提にして「これからの自分達の道筋」を考えられる立場にある、日本は「小国から大国に変わりえた稀有の国」で、「先進国のくせに輸出で儲けようとする後進国」、自分の先進性と後進性を比較検討して、自力で考えるしかない。「だから、本を読むべき」「読んで考えろ」。
 本屋の立場で言うと、本に答えを求めるな、です。マニュアル本やら、いわゆる「成功本」、予言物は、読書ではありません。行間を読む、とか、批判的に読むとか、本来の読書をしてください。考えながら読んでほしい。ベストセラーに飛びつかないでほしい。そういう点では、海文堂の棚、まあまあやと、「自我持参」。
 冗談はおいて、かつて「出版は不況に強い」と言われていました。業界の大先輩にオイルショックの頃のことを訊くと、全く影響がなかったそうです。橋本さんは、景気の動向と出版界の売り上げの関連について数字をあげることはしません。それをすれば、投資アナリストのごとく、出版に投資せよ、ということになりますから。問題にするのは、「不況に強い」と言われた出版の変化についてです。
 出版は「書籍」が中心だったのです。景気の動向に左右されない「人のあり方」に立脚する書籍を出版していたのです。そういうものは巨大産業にはなれません。なったら、それは出版ではないのです。現在の「出版」はメディア産業になってしまったのです。景気のあり方に影響される人のあり方に左右されるようになってしまいました(ややこしいけど、わかってちょうだい)。それは、「人のあり方に立脚する」出版の「主権放棄」と橋本さんは言います。
 今、大手出版社には、なかなか入社できません。入社できた優秀な人が希望するのはファッション雑誌です。本来ヤクザな稼業のはずです、一発当てる、というのもアリでしょうし。優等生では勤まりません。
 (平野)


■『大不況には本を読む』 橋本治中央公論新書ラクレ 740円+税
 業界本ではありません。「人間のあり方に立脚する」文芸関係者として、現実生活にもの申すのです。
 産業革命はそれまでの世界のあり方を変えてしまった、日本は開国して先進国になったが、150年たったら、それも行き詰った、「近代を見直すべき」と。「世界のあり方」を前提にして「これからの自分達の道筋」を考えられる立場にある、日本は「小国から大国に変わりえた稀有の国」で、「先進国のくせに輸出で儲けようとする後進国」、自分の先進性と後進性を比較検討して、自力で考えるしかない。「だから、本を読むべき」「読んで考えろ」。
 本屋の立場で言うと、本に答えを求めるな、です。マニュアル本やら、いわゆる「成功本」、予言物は、読書ではありません。行間を読む、とか、批判的に読むとか、本来の読書をしてください。考えながら読んでほしい。ベストセラーに飛びつかないでほしい。そういう点では、海文堂の棚、まあまあやと、「自我持参」。
 冗談はおいて、かつて「出版は不況に強い」と言われていました。業界の大先輩にオイルショックの頃のことを訊くと、全く影響がなかったそうです。橋本さんは、景気の動向と出版界の売り上げの関連について数字をあげることはしません。それをすれば、投資アナリストのごとく、出版に投資せよ、ということになりますから。問題にするのは、「不況に強い」と言われた出版の変化についてです。
 出版は「書籍」が中心だったのです。景気の動向に左右されない「人のあり方」に立脚する書籍を出版していたのです。そういうものは巨大産業にはなれません。なったら、それは出版ではないのです。現在の「出版」はメディア産業になってしまったのです。景気のあり方に影響される人のあり方に左右されるようになってしまいました(ややこしいけど、わかってちょうだい)。それは、「人のあり方に立脚する」出版の「主権放棄」と橋本さんは言います。
 今、大手出版社には、なかなか入社できません。入社できた優秀な人が希望するのはファッション雑誌です。本来ヤクザな稼業のはずです、一発当てる、というのもアリでしょうし。優等生では勤まりません。
 (平野)