週刊 奥の院 9.22

◇ ちくま文庫より。
■ 五木寛之沖浦和光 『辺界の輝き  日本文化の深層をゆく』 720円+税 
 元本は2002年岩波書店刊。
 沖浦は1927年大阪生まれ。桃山学院大学名誉教授、比較文化論、社会思想史。被差別部落で伝承されてきた民俗文化・産業技術研究。山の民、海の民の歴史も。
(帯)
 サンカとは? 遊行者とは? 漂泊民が残した豊饒な文化
 五木の『風の王国』(新潮社、1985年)について。

(沖)「霧の二上山、深夜の仁徳陵……異族の幻像か、禁断の神話か」とある。ありゃ、五木寛之って九州の生まれなのに、なぜ仁徳陵なのか、と思いましてね。ぱっぱっと頁を繰ると、二上山を中心とした「ロマンの疾風」とくる。ひとりの青年が、二上山の山中で、かぜのように疾歩する不思議な女性を見たところからはじまる。おう、これはうちのホームグランドじゃないか(笑)。……「戸籍から消えた流民の群れ、風の一族」とある。風のように山中を疾歩する若い女は、流浪の民「ケンシ」の後裔だった。あっ、これ、サンカじゃないか。すぐ、ピーンときました。二上山とサンカ……どういうことなんだと。
(五)あの「風」は、紀州との境の「風の森峠」からイメージがつながったんです。

1 漂白民と日本史の地下伏流
2 「化外(けがい)の民」「夷人雑類(いじんぞうるい)」「屠沽の下類(とこのげるい)」
3 遊芸民の世界――聖と賤の二重構造
4 海民の文化と水軍の歴史
5 日本文化の深層を掘り起こす

■ 大村彦次郎 『文壇さきがけ物語  ある文藝編集者の一生』 1200円+税 
 大村は1933年東京生まれ。講談社で文芸雑誌編集など文芸出版一筋。
「純文学と大衆小説の両方に精通し、しかも、文学史と時代の流れを俯瞰する目を持っている。この世界の第一人者といっていいだろう」(川本三郎・解説)。
 本書は、大正末から活躍した編集者・楢崎勤(1901〜78)の一生を追い、戦前・戦後の昭和文壇の舞台裏を描く。
 楢崎は1925年(大正14)に新潮社入社。

……楢崎は最初、出版部に配属された。出版実務にはほとんど無知だったので、支配人の中根駒十郎から出版部員としての基礎知識について、懇切丁寧な指導を受けた。また中根は楢崎を連れて、芥川龍之介佐藤春夫久保田万太郎、吉田絃二郎、北原白秋といった、新潮社と関係の深い作家や詩人宅を回り、楢崎を彼らに紹介した。……

 社長の佐藤義亮を中心にした「家内工業」。佐藤は当時無理がたたって自邸に籠っている日が多かった。

……楢崎はその枕元に呼びつけられては、社長直々に編集者心得を言い含められた。新刊書の広告コピーや小説の梗概を書いたり、作家の講演筆記を起こすことなどが最初に与えられた仕事だった。……

 関東大震災の復興期。作家の地位が高まり、作家志望の文学青年が増えた。それに編集者・中村武羅夫伊藤整ら。作家たちもそうそうたる人物が並ぶ。
 楢崎自身、昭和の初めに新興芸術派の一員としてデビューしたが、作家としては大成しなかった。

■ 植草甚一 『いつも夢中になったり飽きてしまったり』 1100円+税 
 元本は1975年番町書房。
● ニューヨークは思い出して書きやすいところだった
● やさしい本ばかり読んできた
● ジャズとロックの快的混沌状態のなかで
● 「草月アート・センター」時代はみんな若かった
● なんにでも手を出しては失敗する男
● フォニーの五つのタイプ



◇ うみふみ書店日記
 9月21日 土曜 
 林哲夫さん来店。個展のご案内をいただく。 「巴里2013、東京1978」 10.5〜16 ギャラリー島田にて。
 
 











 






その林さんのブログで『BOOK5』の話。もう【海】で買えない。 http://sumus.exblog.jp/
 
 P社Iさん、またまたたくさんお買い上げ。買い切りI書店の本をしばらく買わずに【海】で。ほんとにいろいろと考えてくださる。ありがとう。
 今日もたくさんの営業職の方々がお別れに。仕事抜きで来てくださる。
 日販の昔の担当さんも赴任地からわざわざ。

 成田さんの展覧会も大盛況。

【海】写真集もすごい勢いで買っていただいている。追加せねば。しっかし、「閉店」が本になるなんて。

 GF・Kさんの母上様までご挨拶してくださる。
 
 トンカさんから、懐かしいお客さんのことを聞く。お元気なら何よりです。

 前の店からのお客さんHさんはポートアイランドから来てくれる。「大きいとこはイヤ、はよ次の本屋に〜」とわがままを。

(平野)