週刊 奥の院 9.17

■ 小池和夫 『異体字の世界  旧字・俗字・略字の漢字百科』  河出文庫 760円+税 
 1958年岐阜県生まれ。活字・写植の文字校正者、DTP組版の研究・実務、日本規格協会符号化文字集合調査研究委員。
 2007年7月初版の改訂版。初版の寿命は3年くらいと考えていた。常用漢字の改正もあるが、いわゆる情報技術の進化による。初版では携帯電話のメール文字を考えに入れたが、今はスマートフォンの普及による漢字変換量の増大、手書き入力が充実。JIS規格とは違う国際的な工業規格で文字が作られている。

第一章 異形の文字たち   携帯メールでも使える不思議文字  異体字はなぜできる?  異体字の分類  身近な異体字 ……
第二章 日本の正字ができるまで   当用漢字表の公布まで  子規の憤慨  漢字用覧  印刷局の活字 ……
第三章 人名異体字の憂鬱   三大人名異体字  人名にしか用例のない字  作家の名前 ……
第四章 旧字は意外と新しい   お洒落(?)な旧字体  当用漢字表で採用された簡易字体  当用漢字表に示された旧字体  こっそり消えた旧字体 ……
第五章 拡張新字体の黄昏
第六章 ユニコード異体字
附録 「かな」も異体字  漢字の豆知識

 文字はもともと手書き、それも、もともと毛筆。毛筆には楷書、行書、草書があり、崩し字があり、さらに隷書、篆書がある。これは書体の話? 字体とどう違う?
 第一章で問答式にして説明してくれるが、漢字3000年の歴史を頭に入れるのは難しい。

……毛筆の文字には楷書だけじゃなくてこのようなさまざまな書体があるということです。
「だからそれは書体の話で、字体の話じゃないだろう。今は字体の話でお願いします」
 書体が違えば字体も違いますから。
明朝体でもゴシック体でも字体は一緒なんじゃないか?」
 それは印刷文字の話ですよ。手書きでは、書体が違えば字体も変わるんです。だから、字体の話をするときには必ず楷書で考えることになっているのです。
「正式な文字は小篆、つまり篆書だって今言ったじゃないか」(紀元前200年頃、始皇帝が「小篆」を正式文字と決めた。当時は隷書で書いていた)。
 七世紀から九世紀、唐の時代に楷書が正式な文字と決められたんです。隷書から楷書への変化は紙の発明と普及が大きく影響しています。字体としては隷書と楷書はそれほど違わず、筆の使い方の変化が大きいのです。四世紀に生きた王羲之という人は書聖といわれますが、この人の頃に楷書を含めて今に続く毛筆書体が完成したのです。……

 その後は新しい書体は生まれていないが、文字を読み書きする人が増えてくるのに伴い、さまざまな字体が流通するようになる、それが「異体字」。
 長い歴史の中で書体が変化し文字の形が変わり、生まれた形がそれぞれ楷書に移し替えられると「異体字」になる。「竜」と「龍」、「着」と「著」、「峰」と「峯」など……。
 また、同じ言葉をあらわすのに異なった成り立ちで作られた字がある。「花」と「華」、「笑」と「咲」など。
 楷書を正式な文字にするのに字体を定めるが、ここで篆書『説文解字』を参考にしたために「厄介事」が始まった。「高」を正式な形にしたが、「�癲」も残り日本にも伝わった。300年ほど前の『康熙字典』でも正字は「高」だが、序文に「�癲」が使われているそう。漢和辞典では、「�癲」は「俗字」と表記される。「俗字」=普通の人たちが普通に使ってきた字。
康熙字典』の字体は明朝体。日本に明朝体活字が入ってきたのは明治初め。以後昭和24年の「当用漢字字体表」告示まで印刷物はその字体。それが「旧字体」。
 

 現代では、文字は今ピューターで扱えるか否かという観点でもはかられるようになりました。コンピュータで扱えない限り、文字として流通できない時代ともいえます。

 今、ユニコード(国際規格とアメリカ企業による規格)では9万字以上の漢字が登録されている。ある国だけでしか使われていない漢字がある。それも含まれるが、半分以上は他の漢字の異体字と考えられる。
「それをはっきりと示すにはもう少し時間がかかる」
 漢字は進化し続けている。


◇ うみふみ書店日記
 9月16日 月曜
ちょうちょぼっこ」持って、お菓子がやって来た。逆。チャキチャキ3人娘ご訪問。
 鳥瞰図絵師の【海】透視図、完成間近。
 店内撮影してくれたお客さん、私が写っている分を現像してくれました。
 ゴローちゃん、週末石垣島に。「離島の本屋」さん訪問。おみやげもらった。
「誰と行ったん?」
 皆さん、ありがとう。

(平野)