週刊 奥の院 9・13

 2F「港町グッズ」(雑貨・文具・絵葉書ほか)は最終日まで販売いたします。
今週のもっと奥まで〜
■ 草凪優 『ガーターストッキング、売ります』 角川文庫 514円+税 
 2005年『桃色リクルートガール』官能文庫大賞、10年『どうしようもない恋唄』「この官能文庫がすごい!」大賞。
 表題作より。
 奥崎孝雄はOA機器リース営業マン、30歳。不況で成績上がらず、収入確保のため副業、高級ランジェリー訪問販売。仕事でツテのあるOLたちが顧客。というのも、OA機器で作業するのはOLたちで、決定権のある上司も彼女たちの意見を無視できない。特にお局様的な煙たいタイプの女性とのパイプが重要。営業訪問のたびに、差し入れやコンサートチケット手配、合コン設定などの努力。結果、ケータイには彼女たちの電話・アドレスが入っている。顔を合わせるOLたちにランジェリーの話をすると、意外なほどの反響。やはりお局様。

……
「ちょっと前に、勝負下着なんて下品な言葉が流行りましたけど、下着にお金をかけるっていうのは、そういうのとは全然別だと思うんですよ。内側からエレガントになるっていうか、いい下着を着けると自然と姿勢もよくなってきますし……」
 必死に考えた台詞だったが、彼女たちの意識はすぐに、奥崎が持参したランジェリーに奪われた。
(試着を希望する、恥かしいと言いながらサイズの確認をしてもらう)
……サイズに不安があるのではない。自分のランジェリー姿を見てほしいのだ。ひとりでうっとりするだけでは飽き足らなくなり、異性の眼にどう映っているのかを確認したくなるのである。
 清原万里子もそうだった。
「こんな大胆な下着、着けたの初めて……でもね……ベッドインのとき、こんなセクシーな下着を着けたら、男の人、引かないかしら」
「いやあ、燃えると思いますよ。こんなセクシーな女をだけるとなって、引くような男は男じゃありません」
(購入決定)
「うん。でも……あなたは我慢できるの?」
「もしよろしければ……その下着、脱がすお手伝いをしても……」

 というパターン。しかし、そんな予定調和では面白くない。
 20代半ばの目立たない、化粧っけのない地味な真弓の場合。

「わたし、興味があるんですけど……」
(奥崎、試着させて驚く)
……瞬間、奥崎は動けなくなった。呼吸も瞬きも忘れ、眼の前の女を凝視してしまった。
 真弓は赤い色の三点セット――ブラジャーとショーツガーターベルトに、ナチュラルカラーのガーターストッキングを着けていた。赤は人気のカラーだが、実際に似合う女はいない。
 しかし、真弓には呆れるほどよく似合っていた。
 肌が抜けるように白いせいだろうか。あるいは、バストとヒップ、太腿に意外なほどボリュームがあるからか。四分の三カップからはみ出した乳肉や、Tバックショーツからはみ出した尻肉、そして、ガーターベルトからはみ出した太腿の肉が、身震いを誘うほど悩殺的だ。……

 腰の位置、括れ、長い美脚、素肌の肌理細かさ……、奥崎の「欲望器官」は痛いくらいに……。
 お金がないという真弓に、奥崎は、

「かまわないんだよ、ただであげても」
「……触ってくれ……その足で踏んでくれ……」

 この世でいちばんガーターストッキングの似合う女を見つけた。 



◇ ヨソサマのイベント




■ 原田の森の青春譜 ――神戸の近代化と関西学院―― Ⅱ部「躍動」
 9.28〜12.24  神戸文学館 http://www.kobe-np.co.jp/info/bungakukan/







◇ うみふみ書店日記 
 9月12日 木曜
 午前中、知人のお見舞い。垂水なので、B堂Oさんの顔を見に。
 さすが、筒井康隆御用達の本屋。サイン本ゲット。
 帰宅して「奥の院」。

◇ 先週のベストセラー
1.成田一徹  新・神戸の残り香  神戸新聞総合出版センター          
2.同上    神戸の残り香     同上                 
3.曽野綾子  人間にとって成熟とは何か  幻冬舎新書
4.盛力健児  鎮魂  宝島社    
5.      神戸ルール  中経出版
6.      神戸市戦災焼失区域図 復刻版  みずのわ出版 
7.室井まさね  漫画・うんちく書店  メディアファクトリー
8.      内田樹による内田樹  140B         
9.百田尚樹  海賊と呼ばれた男(下)  講談社     
10. 石井桃子  家と庭と犬とねこ  河出書房新社                    



ミシマ社「ミシマガジン」で郄田郁さんが、チラチラと【海】のことを。ありがとうございます。
 http://www.mishimaga.com/hon-watashi/index.html
(平野)