週刊 奥の院 9.4

■ 成田龍一 『戦後日本史の考え方・学び方  歴史って何だろう?』 河出書房新社 14歳の世渡り術 1200円+税 
 
 1951年大阪市生まれ。日本女子大学教授、近現代日本史。『増補〈歴史〉はいかに語られるか』(ちくま学芸文庫)、『「戦争経験」の戦後史』(岩波)など多数。


「はじめに――歴史って何だろう?」より。

 歴史とは何か。
 ふだんはそんなこと、考えもしないでしょう。そんなことは決まっている、教科書に書いてあることじゃないか、そういう声が聞こえてきそうです。
 でも、ほんとうにそうでしょうか。よく考えてみると、「歴史とは何か」という問いを通らないと先に進めないような問題が、この世の中にはいくつもあります。
 たとえば、教科書に書かれていることが歴史だとしたら、教科書に書かれていないことは歴史ではないのでしょうか。毎日毎日、世界中でたくさんの出来事が起こっていますが、教科書に載っていることだけが歴史なのでしょうか。教科書に載らなければ、歴史ではないのでしょうか。……

 日本と中国・韓国間の「歴史問題=歴史認識」という「歴史」は何なのだろうか。

……歴史を勉強するということは、同時に歴史とは何か、という問いを考えていくことによって、より深められていくことになるということができます。
 (難しい問題だが、成田はひとつの「入口」をつくる。歴史とは、すでに決定しているものではない、ということ。つねに変化している)
 過去の出来事をなぞることが歴史ではなく、たくさんの出来事から、ある出来事を抜き出し、別の出来事と結びつけて説明することが、歴史なのです。歴史は出来事を解釈し、語る営みです。

第1章 戦争に負けてどうなった? 占領の話
●あの戦争を何と呼ぶ?  ●敗戦? 終戦?  ●8月15日という特別な日  ●日本はアメリカに占領された?  ●「東京裁判」のここが重要 他
第2章 知ってる? 「55年体制」って何?  
●1958年――失われてゆく記憶の世界  ●社会運動がさかんだったころ  ●これがいわゆる「政治の季節」  ●1955年に何があった? 他
第3章 経済大国? それっていつのこと
第4章 「もうひとつの」戦後日本を見てみよう
第5章 歴史は生きている  これからの日本
おわりに――歴史はひとつではないが、なんでもありでもない

「戦後史」の始まりは、戦争が終わった1945年8月15日と考える。では、その「戦争」を何と呼ぶのか? 呼び方で「解釈」というか意味が違ってしまう。
 戦争を始める時、日本は「大東亜戦争」と呼んだ。戦後もその名を使うことは、あの戦争を肯定することになる。
 それに「戦争が終わった」と書いたが、「終戦」と「敗戦」では、戦後の「解釈」も違ってくる。

……出来事の呼び方のなかに、考え方と評価が含まれているということです。用語のなかにも「解釈」が入っているのですね。


 本シリーズの主な読者対象は中学生。
成田は、「歴史」を学こと・考えることの大切さとともに、伝えたいことがある。
「8.15」と同じように、「3.11」が特別な日――大地震津波原発事故――であること。エネルギー問題、原発問題、豊かさ、未来についてどのように考えるか。「3.11」を考ることは「歴史」を考えていくこと。

 歴史は過去を語るのですけれども、同時に未来を語っています。未来をどのように考えているかによって、いまがどのようにとらえられ、過去がどのようにとらえれられるかが変わります。
 そこで人々とのあいだの共通項をもつ解釈に立たないかぎり、信頼されません。あまりに勝手なことを語れば、誰からも支持されなくなっていきます。
 未来に向けて、いまを確かめ、そして、どのような過去の条件があるのかということを知る営みが、歴史です。

◇ うみふみ書店日記
 9月3日 火曜
 夏葉社Sさんより、写真集のキャプションの確認。いよいよ入稿。
 雨の中、多くの方がお別れに。
お孫さんのために月刊絵本定期購読の方。お役に立てずごめんなさい。
よくお問い合わせをしてくださる方の言葉、「これからも本に関わるお仕事を……」。
いつの間にか友だちみたいにお話をするようになった方、「またどこかで会いましょうね……」
みんなGFでおま。
T出版クッスー。6日の呑み会で会える。その次も決まっている。
 ゴローちゃんのツイッターにいつも熱いメッセージが。
https://twitter.com/sakubun
「ツボちゃん、ブンちゃん」のブンちゃん? 私、旬子さまの本の隣に『眼』並べています。職権濫用です。
https://twitter.com/ciaoyue
Iさんか? 次は呼ぶか探すかするように。

「海会」ほんまの最終回配布開始。

(平野)