週刊 奥の院 8.31

■ 半藤一利・竹内修司・保阪正康松本健一 『戦後日本の「独立」』 筑摩書房 2400円+税 

 昭和史研究者4人が対談。



「はじめに」(保阪)

 私たちは占領期をどのように理解すべきであろうか。軍事に敗れて戦勝国の占領支配を受けた期間、つまり戦勝国の命ずるままに国家システムの再建を図った期間とみるか、それとも戦争に敗れた結果として、国民の側は軍事主導体制の解体をめざし、戦勝国の企図する基本方針に納得しての国づくりを目ざした期間と理解すべきか、はたまた戦勝国の思惑と計算に振り回されての新体制での自立であったのか。その解釈は今もまだ明確には断言できる状態ではない。……

 保阪は、昭和を三期に分ける。前期は、昭和20年8月の太平洋戦争終結までの期間。後期は、昭和27年4月28日のサンフランシスコ講和条約発効からの期間を指す。中期は、6年8ヵ月に及ぶ占領期。

 昭和中期は前期と後期に挟まれての緩衝地帯ということもできるであろう。ありていにいえば、この期間に日本人の多様な姿があらわれていると、私には思える。
 

 この期間を政治史、軍事史、文化史、庶民史などさまざまな視点で解析する。
「はたしてこの期に、日本人は何を考えていたのだろうか」

「戦後」という語彙が現在に至るも一定の力をもって語られている国は珍しいのではないだろうか。私たちの国は、この語に本来の意味である「太平洋戦争終結後」として用いているのだが、しかしこの戦後という語もすでに六十八年が過ぎている。にもかかわらずこの「戦後」という語の持つ強さは、社会の中で相応の力を持っている。……

 ある意味、神聖化されている。「平和」「自由」「民主主義」「人権」などのイメージを持っている言葉。

序章  戦後日本のなかの三・一一
第一章 丸山眞男超国家主義の論理と心理」の衝撃
第二章 民主化のなかの宮様たち
第三章 二・一七ゼネストの中止命令
第四章 アメリカ文化の大流入
第五章 黒澤明小津安二郎が描いた戦後風景
第六章 西田幾多郎全集の売り切れ
第七章 中華人民共和国北朝鮮の成立
第八章 異国の丘と引揚者
第九章 文藝春秋天皇陛下大いに笑う」の成功
第十章 日本再軍備をもう一度ふり返る
第十一章 レッド・パージ
第十二章 講和問題と「曲学阿世
第十三章 安保条約と吉田ドクトリン
終章  アメリカから得られたもの失ったもの

「序章」より。

(松)三・一一の大災害を目の当たりにして、多くの人が思い浮かべたのは一九四五年八月十五日のことではないでしょうか。戦争が終わってまわりを見渡したら焼け野原だった、あの光景ではなかったか。(人災と天災の違いは大きいが)焼け野原と同時に、あっというまに二万人からの人が亡くなったという大きな喪失感は、八月十五日に匹敵すると思うのです。
(半)私も八月十五日の敗戦が頭に浮かびました。……もうひとつ、これは維新だと。敗戦直後、もういちど国づくりをやらないといけないと多くの日本人が考えた。
 ところがそのうち、今度はちょっと違うぞ、と思いはじめたのです。まだ“戦争”は終わっていなかった。福島原発放射能汚染問題です。これは終わっていないし原発廃炉にもっていく技術もまだつかんでいない。
(学者・専門家を批判)原子力ムラの科学者たちには、罪の意識とか、責任とか、編成とかまったくないという点で、陸軍と同じですね。
(竹)第一章のテーマになる、丸山眞男が戦後すぐに書いた陸軍への批判がそのまま当てはまりますね。……


◇ うみふみ書店日記
 8月30日 金曜
「直」仕入れ版元の返品準備。
 辛い、この土日で全部売れてくれたら、と甘い願望。
 
 外商Hが【海】の昔のPR誌などを放出してくれる。ありがとう。あるところにはある。

(平野)
 20:24 私、バカです。この本、既に紹介してますな〜。笑って許しておくんなさい。「老人力」進行中。