週刊 奥の院 8.22

■ 『こころ』 Vol.14  平凡社 800円+税 
特集 マンガ論の現在地
鼎談 夏目房之介吉村和真宮本大人 マンガ史と近代の横断
呉智英 マンガ論は進化しているのか
大塚英志 まんが研究の現在と将来
世界⇄マンガのいまを読む  藤本由香里  小田切博  野田謙介

「鼎談」より。

(宮本)夏目さんの世代が、戦後マンガ史という枠組みで、歴史観をつくっていったとき、僕が最初に変だなと思ったのは……戦後、戦後とあれだけ言っているのに、戦後という言葉の意味の負荷がよく分らないんです。
 だって、こてんぱんに負けた戦争の後というのは、戦争に負けたということの意味が負荷としてものすごくかかっているはずなのに、単に一九四五年から後の話しかしていないように見えた。それは変だろうと思ったわけです。
(夏目の一世代上の石子順造らは「戦後」という言葉に重い意味合いをもたせてくる)
 多分そこから距離を取りたい、自分たちなりの枠組みで、自分たちなりの感覚でマンガ史を語りたいという気持ちがあって、夏目さんの世代はものを書いてきたんじゃないかと思うんです。だけど、その後の世代はその屈託は分らないので、単にマンガ史というのは手塚治虫から後を語ればいいんだなというふうに思ってしまっている。
(夏目)手塚治虫が映画の手法を戦後のマンガに持ち込んだとか、ストーリーマンガの起源は手塚にあるとか、今僕らのマンガ研究の中では問い返されていることが、世間一般の認識としてずいぶん広まってしまったよね。
……

 

 毎号[表2]に串田孫一の文章が掲載される。今号は、
 

 私の気晴らしのためならば、そんなに気を使って、突然思い付いたような顔までして散歩に誘ってくれなくともいい。湖が見下ろせる山荘は昔の壗だし、海がよければ砂丘を歩こうなどと話してくれなくともいい。
 私が今、本当に気晴らしが必要ならば、その方法は沢山知っている。だが今は気晴らしなどで崩してしまいたくない程、暗に気分が充実している。 『傀』より


■ 塩見鮮一郎 『貧民に墜ちた武士  乞胸(ごうむね)という辻芸人』 河出文庫 760円+税
 江戸時代初期、失職した武士たちは集められ、乞食に身分を落とし、大道芸をなりわいとして生きた。





■ 内澤旬子サマ 『身体のいいなり』 朝日文庫 580円+税 
 講談社エッセイ賞受賞作。
 腰痛、アトピー、冷え症、無排卵性月経……、“健康”を実感したことがなかった。38歳、フリーのライター、貧乏のどん底で乳癌。治療の副作用から逃れるべく始めたヨガで、なぜかどんどん元気になっていった。旬子サマ闘病記。


◇ うみふみ書店日記
 8月21日 水曜
 開店前からP社Iさんがお待ち。たくさんの本を買ってくださった。本屋訪問記「他店の棚 北のほうの号」を頂戴する。【海】もずっと応援していただいている。感謝。
出版ニュース」のコラムでI出版会のFさんが【海】閉店のことを書いてくださっている。

 常連Sさん、「俺はレジ回りとかレジ前の平台は興味ないからどこの本屋でも無視するけど、ここはちゃうな。初めてじっくり見た」。
私、思わずタメ口で「今頃何言うてまんねん!」。
 おいでになるたびに「やめんのん?」と尋ねるご近所老舗社長、今日は電話で、「あんたとこやめんねんてなあ?」。
 お客さん、「こういう本を探す楽しみがなくなる」と買ってくださったのは、京都の有名書店店長Hさんの本。
 吉祥寺RのHさんからメール。9月にご夫妻で来てくださるそう。
 皆さんありがとう。

(平野)