週刊 奥の院 8.20

■ 瀬戸内寂聴 齋藤愼爾 『対談 寂聴詩歌伝』 本阿弥書店  1800円+税 
 本書は対談と瀬戸内の俳句随想7篇、俳句60句。二人の出会いは瀬戸内の出家前。故井上光晴の紹介で姉の歌集を齋藤に出版してもらった。共著もあるし、瀬戸内の句集も進めている。何より齋藤は寂聴の評伝を書いている。
第一部 [対談]
1 私の人間歳時記  2 遊行の文学  3 寂聴、俳句披露
第二部 [随筆]
知らぬ日  おはんさんの花供養  あの人が、江國滋  可愛い怪物  青浄土のひと  あんず句会  歳月の密度
第三部 [俳句]
瀬戸内寂聴俳句抄 六十句  還相の寂聴――横超する宗教者  
 おわりに

「私の人間歳時記」より。

(齋)――今東光さんの法名は「春聴」ですが、瀬戸内さんのは今さんがつけて「寂聴」とした。とてもいい法名ですね。
(瀬)――師匠の法名の中の一字をいただくしきたりなんで。それで、「おまえさんは女だから、春をあげる」とおっしゃったんです。でも、今先生の小説に『春泥尼抄』というエロっぽいのがあるじゃないですか。それで、「春は飽き飽きしました。だから出家したんだから、聴をください」と言ってみたけど、それから一週間くらい音沙汰がなかったんです。そしたら突然、「なかなか聴につける字が浮かばないから、今朝早く起きて三時間座禅したら最後に目の前に寂という字が浮かんだ、寂はどうか」とお電話をいただいたんです。「あっいただき。それにしてください」ってことで決まりました。そうしたら今先生の奥様が、「春聴より寂聴のほうがずっと立派だから、お父さん、替えてもらいなさい」って言ったんですって。でも、私はいやだって断ったのよ(笑)。


「寂聴、俳句披露」より。
 永井龍男の句会に円地文子と参加。場所が銀座の料亭、おいしいもの目当てに。二人が下手で永井が馬鹿にする。佳作なら賞品をもらえるが、二人はいつもビリ争いで、参加賞のトイレットペーパー。円地はプライドが高く、ビリになるのはイヤ。いつも瀬戸内がビリになる。「技」がいる。

◇ うみふみ書店日記 
 8月19日 月曜
 開店してすぐ、アカヘルが芸能棚「落語本」の上にレモンを発見。粋なお客? 単なる忘れ物? 「丸善」にレモンは似合うだろうが、【海】には似合わん。【海】なら何だ?
 話は変わる。京の僧で作家で古本愛好家のTさんが、【海】で回文を作ってくれている。
 「うどん部いかが海文堂」
 うどん? 丼ごと置かれても困る、カップ麺ならOKか?
 私も回文、「でっかい分、どう? う! 首領(ドン)、「V」、勝つで〜!」。苦し〜い。
 S社営業Gさん訪問。ああそうだった、もう美しい営業さんとも会えなくなるのだ〜(悲)。
 H社ベテランMさん訪問中、三宮ブックスM社長来店で、昔話。
 神戸出身の若い営業さん、帰省ついでに訪問。吉祥寺RのHさんにぜひ行くよう勧められたそう。もっと前から来てんか〜。
 丸善のIさん帰省に合わせた「呑み会案内」を配布。おっさん、そんなんしてる場合か〜?
 帰りにJ堂に。
【海】閉店について、あるブログが勝手に分析してくださっている。当事者ではないので、すべて推論。お考えを述べるのは自由だが、特定の人や取引先の実名を出すのはご遠慮いただきたい。閉店の責任はすべて【海】。

◇ 先々週のベストセラー
1.成田一徹  新・神戸の残り香  神戸新聞総合出版センター          
2.神戸市戦災焼失区域図 復刻版  みずのわ出版           
3.得地直美  本屋図鑑  夏葉社
4.      これでいいのか兵庫県神戸市  マイクロマガジン社 
5.桜木紫乃  ホテルローヤル  集英社
6.内田樹  修行論  光文社新書
7.百田尚樹  海賊と呼ばれた男(上) 講談社
8.同上            (下)    
9.池井戸潤  ロスジェネの逆襲  ダイヤモンド社      
10. 林真理子  野心のすすめ  講談社現代新書     

(平野)