週刊 奥の院 8.13
■ アーサー・ビナード 『アーサーの言の葉食堂』 アルク 1600円+税
1967年生まれ、詩人。コルゲート大学卒業後来日、日本語で詩作、翻訳。第一詩集『釣り上げては』(思潮社)で中原中也賞。エッセイ、絵本、小説でも数々の受賞歴。ラジオでも活動。本書は『マガジンアルク』(会員情報誌)連載の「日々のとなり」をまとめる。
1章 ようこそ言の葉食堂へ 食べ物、飲み物、食べる行為、食文化を題材に環境問題、核兵器、原発、TPP,日本語 ……
2章 誤訳の海にこぎ出す 和製英語、誤訳、喫茶店「ドルフィン」の看板、まずそうなお菓子「ミルクサンドゴーフレット」(和製英仏混合、ミルクと砂のウエハース)、「でもしか先生」=デモしかしない先生? ……
3章 がんばればニッポン 複数形・単数形、歴史的仮名表記のカタカナ、「がんばれ!」 ……
4章 万葉マンション入居者募集中 鯨の耳垢、マンションと万葉集、「ジャックと豆の木」の豆、美容室のネーミング ……
「日本のガンバリ」より。
日本のあちこちでみんながんばる。3.11以降とくにがんばった。
……大地震と大津波に見舞われた人々は、生きのびようと一生懸命がんばったが、被災しなかった者も、それなりにがんばっていたのだ。
いちばんがんばっていたことはといえば、ひょっとしたら、それは「がんばれ」のエールをおくる活動だったかもしれない。……
カタカナ、ひらがな、漢字、「!」マークで、雰囲気やリズムが異なる。著者は被災地で「がんばろう」の看板を見かけても気にならないが、東京で同じ文句を目にするとひっかかる。
……よそよそしく感じられ、「がんばれば〜東北のみんな」と他人事みたいに響くのだ。
そもそも……(カナや漢字や活字や手書き文字やレイアウトや印刷や配布や……それに使う時間と体力があるなら)エールじゃなくて具体的な支援を実行しようよと、つい考えてしまう。
「がんばれ!」に代わる言葉、著者は、「おいでよ!」では、と。
平仮名でも片仮名でもびっくりマークをふんだんに使って。
◇ うみふみ書店日記
8月12日 月曜
MJのIさん、帰省したら来てくれると連絡。
彼女の後輩さんたちがいらして、記念撮影。ジジイモテモテ。
編集者Yさんを悲しませてしまう。許しておくれ。
T出版Iさん、飲みに行くで、のお誘い。
Mさんとようやく連絡できた。M書房のNさんが訪問。人文書を【海】が驚くほど販売しているわけではないけれど、お二人と話していて思った。かつて町の小さな本屋さんが次々廃業して雑誌の定期購読が激減した。続いて「人文」「文学」「芸術」などの分野をコツコツ売る本屋がなくなっていく……。
長く高校の先生を勤めたNさん、閉店のことを本日お買い上げ後に「海会」で知って、引き返して来られた。この先生は【海】の典型的は顧客さん。今後どこで本をお買いになるのだろう。
広島から来られた方、「どうも長い間ありがとうございました。もう閉店までに来ることができません……」。
できるだけ平常通りの接客を努めたいと思う。でもね、お客さんたちは【海】にそれぞれの思いを持って、お別れをしに来られている。売り場は熱い!
退社後、友人が今後について進言してくれるが、まだそこまで考えられない。
家にもGFたちからメール。自分のことのように悲しんでくれている。
感謝感謝の毎日。
(平野)