週刊 奥の院 8.2

今週のもっと奥まで〜
■ 森崇俊(もりたか しゅん) 『ラヴ・アドゥー Love ado』 実業之日本社 1400円+税 
 新興マンションディベロッパー経営者・俺、43歳。公私とも順風。美貌の建築デザイナーにふしだらな思いを寄せる。俺の部下、後輩デザイナーら男女の思惑と愛憎が絡み合う。

(帯)滑稽でやがて悲しき恋の「アドゥー(からさわぎ)」。

……
 美浦実砂が俺の前を通り過ぎていく。(彼女が通る前と、通り過ぎた後それぞれの香水の香りが違う)共に俺が好きな香りだ。それを計算してこの女は、通り過ぎていくのか。……俺につれない素振りをする事でより気を引こうとしているのか、それとも忙しさを装い仕事に対する熱意をアピールしようとしているのか?
(実砂のプレゼン、続いてミーティング)
 それにしてもこも美浦実砂の後ろ姿にはそそられる。肩幅、腰骨は、俺が今まで付き合ってきたどの女よりも細い。単にスリムである事を超えて華奢であり、ウエストは括れ、ふくらはぎの皮膚は骨が透けて見える様に薄く、ノースリーブからはみ出る二の腕は複雑な関数を思い出させる曲線を描いている。
 薄紫のプリーツが付いたタイトスカートの裾が歩調に合わせて揺れ、そこからもこの女が俺の気を引こうとしている事は見え見えだ、それはそれで小娘としてこざかしく、可愛くもある。
 俺はその後ろ姿をだて眼鏡の縁から覗き込み、脳裏で彼女を……。

 いろいろ勝手に妄想しているうちに、重要な会議で「隙を作ってしまった」。


うみふみ書店日記 その31
 7月25日 木曜 
休み。大工さんベランダ屋根修理。大工さん昼休みの間に、私、用事で出かけて、倒れるかと。
「朝日」記事。「大阪版本屋大賞」(大阪の書店員が選ぶ、大阪ゆかりの作品。「ほんまに読んでほしい本」)受賞作発表。 
郄田郁『銀二貫』(幻冬舎文庫)。おめでとうさん!
「明日本呑み会」の影響で、ブログ記事変更。
山口県周防大島より、野菜がたくさん。半農半版(漁もするらしい)の「みずのわ農場出版」より。写真。
 島つながりで、『離島の本屋』も良い本です。周防大島の本屋さんも登場。
 
 7月26日 金曜
「みずのわ一徳」来店。間もなく出る『神戸市戦災焼失区域図』を持って日帰り在神マスコミ回り。
直預かりの本、整理して最低限の在庫にすることになった。
 M社Mさん日記届く。
人文会におけるMさんの実務能力の高さをようやく他の皆さんが分かってきたそう。「しょーもない用事を言い渡される恐れがあるので、ほどほどにしておこう」とか、「M善」の実務に疎いが本にやたら詳しい女性の話とか、「紀」で『本屋図鑑』を問い合せたら「取り扱いなし」と言われ、ねばったら「明日あたり入荷するようです」と答えられた話やら……。
おもろいでしょ! わずかな人間だけが読むのはもったいないと思うのだけど。

 7月27日 土曜
 書くことなし、と「書く」のは「書くこと」ではないのか?

 7月28日 日曜
「みずのわ」より新刊2点着。『神戸市戦災焼失区域図 復刻版』と『My Private Fukushima――報道写真家 福島菊次郎とゆく』。内容についてはブログ「奥の院」で。
 
 7月29日 月曜
 いつも通り機嫌よくお仕事、お昼からさらにご機嫌よく。
先週の「呑み会」に参加できなかったGFがわざわざ旅行のおみやげを。勝手に「勘違い」しておきます。
京都の出版社GFから電話、常備のこと。「また漫才しましょ」と約束。「デート」?
ロフ子さん電話。某所からの原稿依頼のことを伝える。「お菓子でごまかされちゃいますよ〜」のお言葉。「詐欺」?

「神戸」夕刊に「みずのわ 神戸市戦災焼区域図」紹介記事。早速問い合わせあり。
記事はこちらで。 http://eonet.jp/news/kansai/kobe/article.cgi?id=85244

 帰りにJ堂Tさんに「M日記」届ける。
「朝日」夕刊、戸井十月死去、肺ガン、64歳。
「朝日」夕刊、「非戦を選ぶ演劇人の会」の憲法劇台本をネットで公開。
http://hisen-engeki.com/daihonn.htm
「朝日」夕刊、「海軍反省会」、広島被爆翌日に調査に入った海軍大佐の証言。「残留放射線の危険性を国民に伝えていれば被爆拡大を防げた」。大本営は原爆投下の事実を敗戦前日まで隠した。証言内容は8月下旬刊『海軍反省会5』(PHP研究所)に収録。

 7月30日 火曜
みずのわ「神戸市戦災焼失区域図」問い合わせ、お買い上げ多く、追加注文。
社主、仕事で徹夜明け、寝ぼけ声。山口県周南市の殺人・放火事件の話。地理的には離れているのだが、地元ならでは話が聞ける。

 7月31日 水曜
「朝日」丸山眞男被爆体験を語った録音テープ。45年8月6日、広島で陸軍情報隊1等兵だった。テープは69年に「中国新聞」記者のインタビューに答えたもの。記者の遺族から広島平和資料館に寄贈された。
「原爆の意味をもっと考えなかったことは懺悔です。……至近距離からの傍観者にすぎない。(原爆症の患者、2世の被爆者が死んでいる)いわば毎日原爆が落ちている。広島は毎日起こる現実で、毎日新しく我々に問題を突きつけている。」
 
 2F「元町古書波止場」のIさん本店に『神戸市戦災焼失区域図』の原本あり、値段は復刻版とは一桁違うそう(もちろん高いほう)。まだ上げることも可能らしい。

 京都「編集グループSURE」の本について遠くの本屋さんから問い合わせ。基本、読者直接購読です。

◇ 先週のベストセラー
1.      本屋図鑑  夏葉社
2.岡崎武志  蔵書の苦しみ  光文社新書            
3.内田樹  修業論  光文社新書
4.藤野可織  爪と目  新潮社   
5.松本広章他  これでいいのか兵庫県神戸市  マイクロマガジン社  
6.小山真人  富士山 大自然への道案内  岩波新書
7.桜木紫乃  ホテルローヤル  集英社
8.百田尚樹  海賊と呼ばれた男(上)  講談社    
9.      同上 (下) 
10. 林真理子  野心のすすめ  講談社現代新書

(平野)
【海】HP更新。 http://www.kaibundo.co.jp/index.html 「眼」は『本屋図鑑』。