週刊 奥の院 8.1

■ 文藝別冊立川談志  落語革命家』 河出書房新社 1200円+税 
○ 特別対談 立川志の輔×立川談春 「全身全霊の落語家 兄弟弟子、師匠を語る」
○ 立川談志 咄・談話・エッセイ・インタビュー
○ 談志対談集 
×中村勘九郎 銀座の夜の芸界放談
×太田光 オレが「天下とっちゃえよ」と発破かけたんだよ
三谷幸喜、一龍斎貞鳳、春風亭柳朝三笑亭夢楽 ……
○ エッセイ 山藤章二、松本尚久、岸田秀吉川潮
……
山藤「立川談志の心を聴いた」より。

 私の人生で大いなる幸運のひとつは、立川談志と出会ったことである。……
「で、俺は日本一の落語家になるよ。手前(てめえ)で言うんだから確かだ。あんたもなるって? ふーん、そうは見えねぇけど、まぁそう思ってりゃソコソコにはなるよ」
 なんて無礼で生意気な男だなと思ったが不思議なことに不快感はなかった。腰を低くして挨拶するのが常識の落語界にトンデモナイ男が出て来たな、というのが初対面の印象だった。
(活字にできない、放送できない話ばかり考えて、“テレビやラジオはなんで俺を使わない”と怒っていた。マスコミの“事なかれ主義”に絶望していた)
「芸人なんて商売は基本的に非常識なことを考え、語らなきゃいけねぇんだ。常識や道徳でがんじがらめになった人間の、心の中のガス抜きをすることで世間が存在を許してくれている。そういう本質的なことを理解してねぇやつらがテレビを仕切り、出まくっている」
 彼の芸人論は正しい。しかし正しいことに必ずしも光が当たらない、これも事実である。私は彼の本音を十分に聴いた。幸運だった。だからいま、彼を失って退屈な余生を送っている。


■ 『en‐taxi』 Vol.39 扶桑社 819円+税 
○ 重松清 取材・文「このひとについての一万六千字」 いとうせいこう「想像力はしぶといぜ、とDJは言った。」
○ 特集 娼婦と文学
○ TALK 水道橋博士×西村賢太 「摩訶不思議なテレビとネットと出版界の遊泳術」
○ 小説 藤野可織「狼」谷崎由依、大場純子、新宮広明

○ 岡崎武志 ここが私の東京 「庄野潤三石神井、そして生田 家庭小説という名のフロンティア・スピリット」
○ 坪内祐三 あんなことこんなこと 「有楽町界隈」
○ TALK 亀和田武×坪内 「帰ってきた倶楽部亀坪」

(平野)