月曜朝礼新刊紹介
【文芸】 クマキ
■ 佐藤良明×柴田元幸 『佐藤君と柴田君の逆襲!!』 河出書房新社 1600円+税
共に英米文学者で学者。
佐藤は1950年生まれ、元東大教授、現在フリー。専門はアメリカ文学・ポピュラー音楽。著書、『ラバーソウルの弾み方』『ビートルズは何だったのか』他。訳書、グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学』、トマス・ピンチョン『ヴァインランド』など。NHK『リトル・チャロ』製作担当。
柴田は1954年生まれ、東大教授、現代英米文学。翻訳の他、文芸誌『モンキービジネス』責任編集も(休刊)。
二人が交互にエッセイ。翻訳、音楽、本、大学……について語る。
「ザドジバダの逆襲」より。
佐藤62歳、柴田58歳。
柴田君は子供時代、数字が並んでいたら平均を出す癖。今、佐藤君の頭の中で同じことが起こった。
「60歳だ! 切りがいい! ジャスト・シックスティ!」
同時にビートルズの「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」の替え歌ができた。「ユー・ソー・イット・スタンディング・ゼア」(そいつはちょうど60歳、ほら、ヒーとミー、そいつらのルックスときたら……)
そいつら=佐藤君と柴田君を平均した存在。
むかし『佐藤君と柴田君』という本が白水社さんから出て、その帯に「佐藤君は東大の先生。柴田君も東大の先生。そしてこの本は、当代一のセンセイション!」と書いてあった。それを見た柳瀬尚紀氏から、東大の先生がションベンをしているようでよろしいとのありがたい評をいただいたが、「そいつ」は道ばたでションベンができるほどの豪傑ではない。確実に、もっとショボい。……
肩書きも冴えない。「元教授」と「教授もと(愛称)」で、平均すると「東大もと教授」になる。
二人の「平均」は白昼には出てこない。世界の暗がり。カフカの「ザムザ」にならえば「ザドーグン」と「ジバダグン」で「怪獣ザドジバダ」。
大学をやめ、文芸誌をやめ、ザドジバダの「逆襲」が始まる。
……
しかし何に対して? 這うたびに六十肩の左前肢を痛ませる老齢に対して? 己が身同様、世界をおぞましく平均化しようとするエントロピックに対して? ムムッ、無理だ、逆襲は無理だ……ギャグ集(原文傍点)にしとこうか。
肩書きがなかったら、若手漫才コンビみたい。
【芸能】 アカヘル
■ 『NOUVELLE VAGUE ヌーベル・ヴァーグ』 山田宏一写真集 平凡社 2200円+税
山田は1938年ジャカルタ生まれ。64〜67年パリ在住。「カイエ・デュ・シネマ」誌同人。トリュフォーやゴダールと交友。
序「嵐の中の青春 I AM A CAMERA」より。
私はもちろんプロの写真家ではなく、ましてやアマチュアの写真家ですらありません。1960年代、フランス滞在中にヌーヴェル・ヴァーグの映画人と知り合い、活気にみちた映画的環境に誘われ魅せられて、初めて写真を撮ったのです。……
ヌーヴェル・ヴァーグとはフランス語で「新しい波」の意味。1950年代末に怒濤のごとく押し寄せたフランスの若い映画作家たちの総称で、またたく間に世界の映画の流れを変えてしまいました。
古くからの撮影所で助監督修業をへなくても、映画への愛とセンスさえあれば、映画をつくることができることの証明と確信の意欲に燃える若さの勝利でした。……
1 アルファビルのほうへ
2 アンナ・カリーナに恋をした
3 ロシュフォールの恋人たち
4 子供たちの時間 『トリュフォーの思春期』撮影ルポ
5 カンヌ1968
6 五月革命あるいはゴダールの決別 わがヌーヴェル・ヴァーグ始末記
(平野)