週刊 奥の院 7.20

■ 岡崎武志 『蔵書の苦しみ』 光文社新書 780円+税 
 古本愛好家である。書評家である。作家である。当然蔵書は増える一方。

……整理術うんぬんと語れるのは、五千冊ぐらいまでの蔵書の場合だろう。通常一万冊あれば、店の規模にもよるが、一軒の古本屋が開けると言われている。一万冊を超え、二万冊に手が届く頃には、家一軒をすべて本のために使うぐらいの潤沢なスペースを持たないかぎり、整理どころではないというのが正直な話。
 こうなると結論は決まっていて、捨てるか売るかして数を減らすしかない。それ以外に体のいい「整理術」などないのだ。

 今でこそ、何本も連載を抱え、著書もたくさんある売れっ子ライターだが、お金に困って古本屋さんに本を売ってきた。月々の生活費から本代を捻出してきた。多少楽になったが、いくらでも金をつぎ込める身分ではない。

 新刊書店と古本屋の本棚の前で煩悶しながら、「これはどうしても買っておこう」と決意した上で求めてきた本ばかりだ。それが溜まり溜まって、まとまった量の蔵書となる。蜜蜂がせっせと花と花の間を飛び回って、どうにか集める蜜みたいなものだ。事情が許せば、買った本は全部そのまま残しておきたい。それが本音だ。……

 あそこの古本屋、ここの本屋と歩きながら、一冊一冊集めた本。愛着がある。眺め、なで、さすり、頬ずりして……、
 

 それが、売られていく日は、飼っていた子牛を手放す酪農家の気分だった。

 それでも、「本は売るべきなのだ」

……スペースやお金の問題だけではない。その時点で、自分に何が必要か、どうしても必要な本かどうかを見極め、新陳代謝をはかる。それが自分を賢くする。蔵書は健全でなければならない。初版本や美術書など、コレクションとしていいものだけを集め、蔵書を純化させていくやり方もあるだろうが、ほとんどの場合、溜まり過ぎた本は、増えたことで知的生産としての流通が滞り、人間の身体で言えば、血の巡りが悪くなる。血液サラサラにするためにも、自分のその時点での鮮度を失った本は、一度手放せばいい。


第一話  蔵書が家を破壊する 
第二話  蔵書は健全で賢明でなければならない
第三話  蔵書買い取りのウラ側
第四話  本棚が書斎を堕落させる
第五話  本棚のない蔵書生活
第六話  谷沢永一の蔵書
第七話  蔵書が燃えた人々
第八話  蔵書のために家を建てました
第九話  トランクルームは役に立つか?
第十話  理想は五百冊
第十一話  男は集める生き物
第十二話  「自炊」は蔵書問題を解決するか?
第十三話  図書館があれば蔵書はいらない?
第十四話  蔵書処分の最終手段
あとがき

 おっしゃることはわかる。でもね、素人には古本屋さんの敷居は高い。まして買い取りにおいてをや。果たして、私の本を買ってもらえるのだろうか? 新古書店だと一冊五十円くらいらしい。それもきれいな本に限る。
 著者は“プロ”だから、蔵書に信頼があるし、古本屋さんとのつながりも深い。
 古本屋さんでも引き取れる本とそうでない本がある。そうでない本を引き取っても、処分業者に引き取ってもらう手間と処分代がかかる。やっぱり敷居高い。
 著者は最終手段として、フリマ式「一箱古本市を提案する。これも人脈や情報網が必要だ。
 そこで、もうひとつ。自宅での古本市。友人やご近所に声をかけて集まってもらい、自分で値付けして本を売る。準備が楽しい。そして「打ち上げ」には売り上げ金を当てれば、素晴らしいイベントになる。
 各章に「教訓」。私に響くのは「教訓その10」。
「三度、四度と読み返せる本を一冊でも多く持っている人が真の読書家」


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(平野)