週刊 奥の院 7.16

■ 山下好孝 『関西弁講義』 講談社学術文庫 880円+税 
 1956年京都市生まれ、神戸市外大イスパニア語学修士課程修了。北海道大学交際本部留学生センター教授。スペイン語学、日本語学。
 本書の原本は2004年講談社メチエ選書。

(帯)

 めっちゃ科学的。
強弱アクセントだけでなく高低アクセント(≒声調)を導入し、標準語とは異なる〈言語〉としての独自体系を明らかにする。
初の包括的概説書。

 
第一講 関西弁との出会い  第二講 二〇〇〇万人の関西弁  第三講 関西弁の音声学  第四講 関西弁の統語論  第五講 関西弁のボキャブラリー  第六講 関西弁の歴史  第七講 いくつもの日本語

 第一講より。
 京都育ち、大学は神戸。神戸に来て、「自分の関西弁を強烈に意識」して、「異なる空気を体験」。
「〜しとぉん」「してやんねん」(語尾の「しとう」は神戸弁だが、「やんねん」には違和感。「〜しとんねん」とは言う)などの語尾が「京都弁とは違う音色」。
 スペイン語を学んで、アクセントの位置が関西弁と同じと気づく。
 くら、らお、てび、ご
 語尾表現が違う同級生も先生方も同じ発音。一人だけ北海道出身の先生が違う。
 くじら(アクセントなし)、じお、れび、じら
「スペインはヨーロッパの関西地方なのではないかとの思いがふと脳裏に浮かんだ」
 北大で、日本人学生にスペイン語を教え、外国人留学生に日本語を教える。
「あるとき、自分が一番自信を持って教えられる語学は何かと自問してみた。絶対に関西弁である。……」
「外国語としての関西弁」を講義している。正式な単位になる科目。本書はその講義ノートをもとにした。
 講義の初めに「関西弁」に対する先入観を解く。大学の講義を関西弁ですることに驚かれる。お笑い芸人の使用言語と思われている。
1 関西人は、よその土地に行っても関西弁を変えようとしない。
――本人は関西弁を喋っているという自覚はない。「変えようとしない」のではなく「変えられない」
2 関西人は声が大きい。
――関西人の言葉が耳につくので目立つ。声が大きいのではなく、「声が高いのである」
 誤解を払拭して、
「関西弁は標準語とは異なる体系を持つ言語である」と講義開始。

(平野)