週刊 奥の院 7.15

「妖怪」本の追加。
■ 『今昔妖怪大鑑  湯本豪一(こういち)コレクション』 パイインターナショナル 2800円+税
 湯本は1950年生まれ、妖怪研究。著書、『江戸の妖怪絵巻』(光文社新書)、『百鬼夜行絵巻』(小学館)など。コレクションは約3000点。絵巻から錦絵、版本、写本、瓦版、着物、雑貨に映画ポスター。幻獣ミイラもあるらしい。本書で紹介するのはその一部。図版400点あまり。


目次
1 絵巻――妖怪の競演  2 妖怪本の世界  3 錦絵――極彩色の世界 
4 妖怪遊び  5 生活のなかにひそむ妖怪  6 祈りと妖怪
コラム
1 芭蕉と蕪村の妖怪体験  2 林家正蔵怪談噺関係妖怪絵  3 北斎百物語  
4 極彩色の妖怪報道  5 本所七不思議  6 化物嫁入り絵巻  7 妖怪映画ポスター


「はじめに」より

 自然に対する畏怖や心の不安が、妖怪を生み出したといわれる。
 天変地異や天候は、人の生命や生活に大きな影響を与えるにもかかわらずコントロールすることは不可能だ。いっぽうで、疫病の広がりは自分や家族の生命の危機にとどまらず、祖先から営々と引き継がれた共同体の存立を脅かす根本的な恐れとして、人々の脳裏から離れることはなかった。昔から、生活はこうした環境と向き合いながら営まれていたのである。
(夜の闇は屋内にもやってくる)
……父祖たちは人智を超えた存在に思いを馳せ、やがて妖怪という生き物を生み出していった。……

「妖怪」は人々の心に棲みつき、人々はその姿をビジュアル化する。現存する最古のものは室町時代の「百鬼夜行絵巻」。妖怪だけが描かれている。人との関わりで妖怪が登場するものもある。江戸時代になると、妖怪一つ一つを紹介する絵巻や、妖怪譚を添えた絵巻も。お化けの嫁入りや妖怪退治など面白味を加えたものも登場する。
 木版印刷が発展して「妖怪」が大量生産され、双六やカルタなどキャラクター化されていく。さらに、着物や印籠、武具などにもデザイン化。千社札など信仰に関わるものも。
 明治になると、幻灯や人形などが外国人に喜ばれ、メンコ・シールなど子ども用娯楽も。
「妖怪文化」は現代につながっている。

(平野)