週刊 奥の院 7.10
■ 『河鍋暁斎絵日記 江戸っ子絵師の活写生活』 河鍋暁斎記念美術館編 平凡社コロナ・ブックス 1600円+税
美術館はこちら。 http://kyosai-museum.jp/hp/top.html
河鍋暁斎(1831年〜1889年、天保2〜明治22)
下総古河藩藩士の二男。父が江戸勤めで同行。7歳のとき歌川国芳に入門。10歳で狩野派に、19歳で修業を終えた。「惺々狂斎」の雅号で戯画や風刺画。
1870年筆禍事件。放免後「暁斎」と名乗る。
81年第2回内国勧業博覧会に出品した《枯木寒鴉図》が高値で売れ、最高賞も受賞。
来日した外国人たちが展覧会などで「暁斎」作品に魅了され制作を依頼。彼らが帰国して自国で紹介した。「暁斎」は欧米で高く評価された。死の直前、国内外からの注文は300点あったほど。
絵日記をつけ始めたのは1870年。その絵日記さえ、死後奪い合いのように買われていった。
絵日記には、その日出会った人たちの似顔絵、事物、弟子たちの学習状況、お金の出入りなどを記録。また、天候も几帳面に記入され、気象庁が公開しているものよりも古い時代で、貴重な資料。
……絵日記の人気の秘密は、こうした上手さやマメさとともに、暁斎自身と周辺の人々の飾らぬ姿を知る事ができる点にもあるだろう。布団に包まり「ナマケ」、「アテガハズレ」て頭を抱える暁斎、雨に降られて梅干を濡らす妻、注文の多さに困惑顔の暁翆、暁斎に叱られる弟子の八十吉、転んで暁斎を振り落とす俥屋辰蔵、イヤミを言う友人の松浦武四郎、等々。暁斎は描いた人々のありのままの姿を時に風刺を加え、ユーモアで包んで描いている。そんな絵日記は、どこを開いてもおもしろい。……(河鍋楠美美術館館長、暁斎のひ孫)
河鍋家には、絵日記は1枚しか残っていなかった。楠美は77年記念美術館創設。東京藝術大学資料館と国会図書館所蔵品を調査して出版。さらに内外で発掘して、2010年に出版。それでも4年分しかない。
横尾忠則 その日を終わらせるための“癖”
横尾が日記をつけはじめたのは、交通事故での長期入院から。
……記録というより吐き出すということ、浄化です。日記は精神療法的なことで、意識の断捨離です。脳裏に去来する雑念を書き留めて吐き出しています。書くことによって、その日を終わらせます。……
暁斎にとってはどうだったんだろう。彼の絵日記を見ていると、創作の整理だったという気がします。……
創造し続けるという、画家たちにとっての生理でもあるでしょうね、なにもかも書きとめておこうとする行為は。整理であって生理。……
コレクターである福富太郎は、1963年に古道具屋で偶然「暁斎」を入手。他の美術品のおまけで掛け軸。それを高名な中国文学者に見てもらうと、「暁斎」と鑑定、「蒐めなさい」と言われた。
……翌日からポケットに二、三百万円を突っ込んで、東京中の骨董屋を探しまわりました。古道具屋を見れば飛びこんで、「キョーサイはないか? キョーサイはないかって、……」
(贋物もあった)
……暁斎の絵は実に愉しい。絵のどこかにちょっとした仕掛けがあって、丁寧で、凝っているんですねえ。……
【雑誌】
■ 週刊金曜日 7.9臨時増刊号 『憲法 特別編集』 金曜日 667円+税
あなたにも責任がある 知らなかったじゃすまされない
対談 赤川次郎×辛淑玉
インタビュー 内田樹 東ちづる 松本哉 想田和弘 伊藤氏貴 八柏龍紀
自民党憲法改正草案徹底批判 小沢隆一 伊藤真 打越さく良 纐纈厚 枝川充志 高橋哲哉 ......
■ 『POPEYE』 8月号 マガジンハウス 648円+税
特集 カレーと本 夏だ! 旨いカレーを食べながら、涼しい部屋で本を読もうかな。シティボーイのブックガイド108冊。
○いい本屋がある町にはなぜか、うまいカレー屋が多い。 神保町/東大前/荻窪・西荻窪
○京都ローカル・カレー&ブックス案内。
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(平野)