週刊 奥の院 7.5

今週のもっと奥まで〜
■ 渡辺淳一 『愛ふたたび』 幻冬舎 1500円+税
 妻に先立たれた老医師(愛称・気楽堂)、愛人ふたり。しかし、不能に。美しい女性弁護士が来院。惚れてしまう。不能であっても、「会話を交わし、和み合い、ともに近づき抱擁し……」心も身体も満たされる性を実現しようと決意。「気楽堂方式」を開発。
 彼女と食事、自宅に誘う。

……
 ベランダの柵に片手をのせたまま、気楽堂が近づくとありが弁護士の香水の香りが夜風とともに漂ってくる。 
 二人の位置は一メートルと離れていない。
 このまま、気楽堂が右手を彼女の肩にかけたら、そのまま抱き寄せることができる。
「やって、みようか」
 いまなら、彼女は逆らわないかもしれない。
「いこうか……」
 気楽堂はいま一度、自分にきいてみる。
 ビルのベランダで二人並んで夜風に吹かれながら、夜景を眺めている。
 二人をさえぎるものはなにもない。
 接吻(くちづけ)をするなら、いまがチャンスである。
「よし……」
 気楽堂は心のなかでつぶやき、軽く横を見る。
 気楽堂の新潮は百七十センチ少しだから、接吻を交わすには、ほど良いバランスである。
 そこで気楽堂は思いきって右を向き、一気に彼女を抱き寄せる。
「あっ……」
 思わず顔を逸らして逃げようとするのを、気楽堂はかまわず彼女の上体を引きつけ、唇を重ねる。
「いや……」といっているのか。
 なお逆らうのを、しかと抱き締め、唇を重ねているうちに、彼女の抵抗が次第に薄れていく。
 そのまま、舌をかすかに移し、唇をなぞる。
 静かな夜である。
……

 彼女と逢瀬を重ね、愛人とも抱き合い、「気楽堂方式」に気を良くした彼は、男性のための「回春科」開設。
 そうそう、世のため人のため。


うみふみ書店日記 その27
 6月27日 木曜
「おばちゃん」論争。
落語の録画を見ていた。ざこば師匠がマクラで新しい弟子の話。おかみさん(ざこば夫人)に紹介する前に「ちゃんと挨拶できるな」と確認。「大丈夫です」の答え。おかみさんに会って、
「おばちゃん、よろしくお願いします」
 おかみさん激怒、師匠の雷。
「そやかて、友だちとこ行ったら、いっつもこない言いますもん」
 彼に悪気はない。
 
 6月28日 金曜
「人文会」御一行来店。神戸組は、紀伊國屋書店誠信書房東京大学出版会未来社吉川弘文館の皆さん。J堂Tさん、K屋Iさん、いっしょに昼ごはん。お話は出版社の皆さんとTさんにお任せ。何せ、私、人見知りでんねん。
 皆さん、未来社Mさん日記の存在をご存知ない。
 退社後、ゴロウちゃんとお茶しながら、ミーチング。セーラ編集長はいない。寂しいけれど、見とれていない分だけ話が進む。
 
 6月29日 土曜
 いつものネタネタスタッフ、自分からしゃべったんやけんね。
 休憩でバックヤードの外商担当者の机でおやつ。途中売り場に呼ばれてそのまま仕事。あとに残ったのはアイスクリームの残骸。翌日怒られたのは言うまでもない。

 6月30日 日曜 
 娘が週末帰省。おみやげの紙モノ。
 閉店するT堂書店chez moi店のカバーも。

 7月1日 月曜
 M社M日記届く。怪人「I」さん(伝説のリブロI泉棚)の話題で笑う。先週の人文会巡行の話も。

 7月2日 火曜
 「明日本」呑み会決定。会員諸氏は連絡を待て。返事よろしく。
 就職活動(求職中)で休職中だったバイト君、めでたく内定獲得で来週から復帰。おじさんは素直にうれしい。

 7月3日 水曜
 中学からの友人、近くに事務所があって始終ウロウロしているのだけど、奥さんとは久しぶり。何ヵ国語出来るのかよく知らんけど、小説は英語版だそう。友人は無視してお話。

◇ 先週のベストセラー
1.今野敏  宰領 隠蔽捜査5  新潮社 
2.堤未果  (株)貧困大国アメリカ  岩波新書            
3.文藝別冊 向田邦子  河出書房新社
4.林修  今やる人になる40の習慣  宝島社    
5.藤田伸二  騎手の一分  講談社現代新書 
6.宮部みゆき  泣き童子 三島屋変調百物語参之続  文藝春秋
7.大石英司  米中激突6  中公ノベルス
8.月村太郎  民族紛争  岩波新書     
9.百田尚樹  海賊と呼ばれた男(上) 講談社     
10. 同上            (下)