月曜朝礼新刊紹介

【文芸】 クマキ
■ 黒川創 『暗殺者たち』 新潮社 1600円+税 
 夏目漱石の全集未収録資料発見で話題になった作品。発見したのは黒川本人で、その資料を小説の中で発表。
 日本人作家がロシア・サンクトペテルブルク大学日本学科の学生に講演。演題はドストエフスキー大逆事件」。
 この街出身のセルゲイ・エリセーエフは日本に留学して日本文学を勉強し漱石の弟子とも言える人。帰国してこの大学で日本文学を教えた。
 
作家は最初に1909年1月5日6日の満洲日日新聞」を見せる。これが漱石新資料。「満韓所感」という文章。
漱石満洲韓国旅行から帰ってきたばかりだった。伊藤博文ハルビンで暗殺されたニュースが届き驚いたことを綴っている。滞在中に親しくした人たちが事件現場にいて負傷し、親友でもある満鉄総裁が倒れる伊藤を抱きかかえたとの知らせにも驚いている。事件自体についてはっきりと感想は書いていない。
この満韓旅行について「朝日」で連載を始めていたが、事件のニュースでたびたび休載。書き手としてはおもしろくない。いずれは事件について意見を述べることになるのも嫌。結局、満洲の旅を書いて連載を終了する。
 翌年3月から「朝日」で『門』連載開始。主人公夫婦の会話がある。

「おい大変だ、伊藤さんが殺された」
「あなた大変だって云う癖に、ちっとも大変らしい声じゃなくってよ」
……

 このあと夫は、伊藤は殺されたから歴史的に偉い人になる、と発言する。
 
 作家の講演は、安重根のこと、『それから』で幸徳秋水について書いていること、大逆事件の人たち、彼らとドストエフスキー作とされる本との関係、『門』の舞台背景など。
 最後に、伊藤と安の死に際しての言葉について想像をめぐらす。
 漱石文学と「暗殺者たち」。
 カバーの写真は伊藤暗殺現場。

【新書】 
イースト・プレス新書創刊。
玄侑宗久 和合亮一 赤坂憲雄 『被災地から問うこの国のかたち』 860円+税
(和合)......放射能が降っている中で、「放射能が降っています」と書いたときから、私は、大げさな話ですが、“鬼になろう”と思いました。
星亮一 『脱フクシマ論』 860円+税
荒木経惟 『天才と死』 860円+税
他、第1回全7点。


【芸能】 アカヘル 
■ 山田宏一『映画 果てしなきベスト・テン』 装丁・画 和田誠 草思社 2600円+税
 個人的な「ベスト・テン」を口実に、私にとって映画撮は何かを私なりに追究してみた映画評論のひとつの試み。(本書の成立ち)
 エピローグ執筆中に救急搬送され手術。

......もとより映画ガイドとか映画鑑賞の手引きとかいった類のものをおこがましくもめざすつもりはまったくなかったものの、あの映画も、この映画も、とふんぎりがつかず、手術後の決死の(!)映画選びにも締め切りが迫り、タイトルばかり際限なく累積したまま、結局は果てしなきベスト・テンに収支することになってしまいました。

(平野)