週刊 奥の院 ５．１
■ 巖谷國士 『〈遊ぶ〉シュルレアリスム』 平凡社コロナ・ブックス １６００円＋税 
序 〈遊ぶ〉シュルレアリスム 『シュルレアリスム宣言』まで ある種のプリコラージュ 誰にでもできる手作業 野生の思考、野生の目 ……
１．友人たちの集い シュルレアリストたち トランプ・チェス・ビリヤード ……
２．オブジェと言葉の遊び デュシャンのレディメイド マン・レイと語呂あわせ ……
３．コラージュと偶然の出会い エルンストにはじまる イメージの錬金術 ……
４．写真の超現実 オブジェ・肖像・レイヨグラフ 都市とモードの超現実 ……
５．人体とメタモルフォ―ズ 女性像あれこれ 奇妙なフィギュアたち ……
６．不思議な風景 ダリと現実の変容 「囚われの美女」としての風景 ……
７．驚異・自然・コレクション マグリットの領域 神話・メルヘン・手作業 ブルトンの書斎から 瀧口修造の「贈り物」
「序」より。
シュルレアリスムというと、とかく観念的に受けとられがちで、日本では「超現実主義」と訳されることもあるせいか、なにやらむずかしい「主義」のことだと思われているかもしれません。
一方では、「シュール」という日本にしかない言葉がいまもひとり歩きしていて、なにか現実ばなれのした幻想的なこと、奇異なことの意味に使われたりしています。
けれども、本来のシュルレアリスムはそういうものではなく、実際にはむしろ目前の現実と生活に立ちむかい、そのなかで「真の現実（あるいは超現実）」や「真の人生」に出会おうとする物の見方、生き方であり、それを多少とも共有するグループとその運動のことだったのです。
（そもそものはじまりは第一次世界大戦）
歴史上かつてない大規模な破壊と殺戮をもたらしたこの戦争のあいだ、のちのシュルレアリストたちはまだ二十歳そこそこでしたが、多くは動員されて戦地の惨状をまのあたりにし、茫然自失のまま復員してきました。
（合理主義、科学技術進歩の結果が戦争と災禍）
彼らには目前の現実すらも、どこか稀薄で非現実的な「嘘っぽい」ものに映っていました。そのようなものとして「与えられた」現実ではなく、たしかな手ごたえのある「真の現実（超現実）」にじかに触れる体験をもとめて、さまざまな試みがおこなわれるようになります。……
アンドレ・ブルトンの自動記述、マックス・エルンストのコラージュ……。巖谷は言う。シュルレアリスムに「遊び」の要素は必要不可決で、「遊び」を原動力のひとつにしていた。
シュルレアリスムはそもそも「専門」にこだわるタテワリ思考をもたず、合理主義とも科学技術信仰ともデジタル思考ともほとんど無縁で、むしろ自覚的に対決しながら、「遊び」の創造性を保ちつづけようとしてきた運動です。
「略年表」「人名解説・索引」。図版２５０点。
■ 筑摩書房編集部 『明治への視点 「明治文學全集」月報より』 筑摩選書 ２０００円＋税 
１９６５年から８９年にかけて刊行した『明治文學全集』（全９９巻・別巻）の月報「明治への視点」をまとめる。執筆者５９名、５００ページ。
大江健三郎「恩賜的と恢復的」
江藤淳「明治の様式」
山口瞳「偉すぎるおじいさん」
篠田一士「ひらかれた文学」
高橋和巳「漱石における政治」
吉田健一「明治の時代」
……
■ 青山大介 『港町神戸鳥瞰図 ２００８ Port city Kobe a bird’s eye view』
企画・発行 くとうてん
初回限定版 解説ブックレット付き ３０００円＋税
通常版 ２２００円＋税
http://t.co/lfVjPzrnDo
（平野）
◇ 全国新聞社 ふるさとブックフェア 各社の本紹介 その８
■ 西日本新聞社
久留米在住、葉室麟『柚子は九年で』 １５００円＋税
ニューヨークと熊本を往復する伊藤比呂美『人生相談 比呂美の万事OK』 １３００円＋税
下関の田中慎弥『これからもそうだ』 １３００円＋税
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『ひずみの構造 基地と沖縄経済』 ９３３円＋税 沖縄は基地がないと食っていけないの！？
■ 共同通信社
河田惠昭『にげましょう 災害でいのちをなくさないために』 １３００円＋税
『記者ハンドブック』 １８００円＋税
『実践エンディングノート』 １８００円＋税
他、文学・社会評論、白川静漢字本、映画、スポーツなど。
あらまー、こんなところに「ロフ子さん」。連載開始。
http://www.mishimaga.com/onna-hitori/001.html
