週刊 奥の院 4.26
今週のもっと奥まで〜
■ 千草忠夫 『闇への供物 1』 ベストセラーズ文庫 924円+税
生年月日、経歴不明。複数のペンネームでSM小説を書き続けた。95年死去。本作品は大長編、文庫全5冊の予定。
北国の城下町、名門女子学園の不正入学をめぐり、純真無垢の美女たちが悪辣な男共によって性の地獄に落とされる。
名刹の未亡人・和香が悪者に口説かれ、嫉妬した寺男・浩造が和香(み台さまと呼ぶ)を奥座敷で責める場面。
……
むりやりに引きずり込まれ、抜き取られたしごきで手首を背中にくくり上げられ、裾を乱した姿で、青畳の上をいざっていた。
「やめて、浩造、今はいや。薫(娘)が帰って来たのですよ」
白足袋を湿け気味の畳にこすらせながら、美しい未亡人は訴える。
だが、男は、立て切った雨戸の隙間から射し込む細い光の中にボウと浮かびあがる未亡人の貌の白さと、こぼれる股の白さに憑かれてしまったふうである。
むっとこもった温気の中に、あえかな脂粉の匂いが混じり、荒い息づかいが、光の中にきらめくほこりを躍らせる。
「さあ、言いなせえ。さっきの客の田中猛蔵は何をみ台さまに口説きに来たんか」
……
「とにかく、これでは話になりませんから、これをほどいておくれ」
「いんや、正直なところを聞くまで、ほどいてさしあげるものじゃございませぬ」
言葉は丁寧だったが、威圧する態度があった。そのために丁寧な言葉づかいがかえって相手を嬲っているような意味合いにひびく。
(春の彼岸の準備で墓の掃除をしていて、ふたりは関係を……)
「……あの人は、きらいです……」
「それならわしのことは……?」
「……」
和香は美しく細い眉をつらそうにたわめた。そして上品な唇を慄わせて、あえかな悲鳴をあげた。……
◇ 全国新聞社 ふるさとブックフェア 各社の本紹介 その3
■ 神奈川新聞社
やはり「横浜開港」はじめ幕末明治ものに注目。
『横浜・歴史の街かど』 900円+税
『ハマの建物探検』 1000円+税
『開国史話』 1400円+税
『亜墨理駕船渡来日記』 1400円+税
『横浜開港時代の人々』 1500円+税 などなど。
■ 山梨日日新聞社
川上健一 『朝ごはん』 1600円+税 昨年本紙連載した小説。「山の小さな朝ごはん屋さん物語」。
『アタック山梨百名山』 1600円+税
『やまなしの日帰り温泉』 2000円+税
川島令三 『山梨の鉄道』 1200円+税
中村司 『渡り鳥の世界』 1200円+税
■ 信濃毎日新聞社
おすすめ本。
今尾恵介監修 長野県立歴史館協力 『信州観光パノラマ絵図 鳥瞰図でたどる大正〜昭和初期の鉄道・山岳・温泉』 1700円+税
「……信州は絵師にとって描き甲斐のある土地だったに違いない。何はともあれ他県より「聳ゆる山は高く、流るる川はいや遠し」なのであるから、画面は自然に立体的になる。のっぺりと平らな都市からの依頼を受けた絵師は、どこを目鼻にするか悩むところだろうが、信州ではその心配はない。背景には雪を戴いた名峰が必ず写り込んでくるし、松本平(安曇平)・伊那平・佐久平・善光寺平のそれぞれの盆地を描くのであれば、手前に滔々たる千曲や天竜などの流れを据えれば構図は実によく決まる。……」
絵図42点。
『古道を歩く 戸隠神社五社めぐり』 1400円+税
『塩の道 歩けば旅人』 1700円+税 他
■ 新潟日報事業社
『越後 豪農めぐり』 1200円+税
農家であり、金融、運送、酒造、新田開発などなど他事業を展開した土地の名士たち。明治になると石油採掘にも。
『にいがた地酒の旅』 952円+税
『新潟100名山』 2600円+税
『新潟県の廃線を歩く』 1600円+税 他
◇ うみふみ書店日記 その17
4月18日 木曜
休み。家事を終え、「奥」。「もっと奥まで〜」はネタなく紙版のみ。
友人からメールあるも、返信不能。
4月19日 金曜
下関市A書店さんより電話。「震災フェア」について問い合わせ。共同配信記事をご覧になった由。リストをお送りする。
月曜からの「ふるさとブックフェア」、地元「神戸新聞総合出版センター」納品。
4月20日 土曜
「朝日」記事。池波正太郎書斎から作家仲間の手紙113通。『オール讀物』5月号で紹介。
娘の同級生が来店、挨拶してくれる。「震災フェア」をわざわざ見に。ありがとう。
「ふるさとブックフェア」用に観光ポスター・パンフが各地から届く。ある新聞社担当さん「地震だいじょうぶでしたか?」のお便りも。ありがとうございます。
GF陽子さんから久々ファックス。ハーバーランドの本屋のこと、春樹本のこと、いっきょんさんのこと、地震のことなど盛り沢山。
春樹本『多崎つくる〜』追加分入荷、4刷り。
4月21日 日曜
「在仙台編集者+書店員による震災本50冊+10」フェアの片づけ。「ふるさとブックフェア」準備。
GF桃子さん来店。
妻が夏用の帽子を買ってくれた。
仙台ロフ子さんから「らぶらぶ小包」。ロフ子グッズがいっぱい。持って帰ってニマニマ。あんまり喜ぶと全国のロフ子ファンから恨み節やら怒声が来そう。
4月22日 月曜
「朝日」記事。野間宏未発表小説「狙撃」自筆原稿。元「中央公論」編集長が保管。「風流夢譚事件」直後で題名が刺激的と掲載断念。内容は兜町を舞台にした経済小説。『週刊読書人』で4月末から3週にわたり掲載の予定。
「全国新聞社ふるさとブックフェア」開始。開店前から神戸新聞総合出版センターT氏が手伝ってくださる。「神戸新聞」と業界紙「文化通信」の取材。
トーハンの当店担当者、教科書採用品業務から現場復帰。
4月23日 火曜
「神戸新聞」朝刊に昨日取材「ふるさとブックフェア」紹介記事掲載。淡路版にも後日。
春樹『色彩を持たない多崎つくる〜』、「週刊朝日」5/3・10号書評欄で特集。古川日出男、中江有里、斎藤美奈子、長薗安浩。
「ヤフーニュース」、「広告批評」島森路子死去。
4月24日 水曜
「震災本」集計、全74冊販売。全体的にはまずまずの売り上げ。
仙台3社で計17冊。「荒蝦夷」Hさんに報告。少なくて申し訳ない。広島から「中国新聞」で見たとブックリスト送付依頼あり。
終日雨。
◇ 先週のベストセラー
1.村上春樹 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 文藝春秋
2.百田尚樹 海賊と呼ばれた男(上) 講談社
3. 同上 (下)
4.近藤誠 医者に殺されないための47の法則 アスコム
5. 神戸ルール 中経出版
6.タニタ 丸の内タニタ食堂 大和書房
7.海老坂武 加藤周一 岩波新書
8.村井邦彦 出雲と大和 岩波新書
9.近藤誠 “余命3ヵ月”のウソ ベストセラーズ新書
10. 姜尚中 心 集英社
(平野)