週刊 奥の院 4.22

■ 碧野圭 『書店ガール2 最強のふたり』 PHP文芸文庫 667円+税 
 ほったらかしであった。
 初め「最凶」と変換。「最凶のふたり」なら黒川博行の“大阪ハードボイルド”になってしまう。
 さて、「最強」コンビ、理子と亜紀、吉祥寺に出店した大手書店に転職。理子は店長、亜紀は念願の文芸書担当で活躍。
 順風なら「小説」にならん。新婚の亜紀は妊娠、家族か仕事かという働く女性には避けて通れない重大な事態。夫にも事件。大出版社のコミック編集者、回収騒動の責任を取って現場から外れる。
 理子には恋愛(?)問題。
 それはそれ。理子は地域・吉祥寺のこと、本屋のことを精いっぱい考える。イベントをして街全体を盛り上げたいと。自店を説得し、他店の協力を得、ショッピングセンター内の他業種にも理解と協力をしてもらわねばならない。
 亜紀が熱弁。
「吉祥寺の書店全体の利益になる。いまの時代、自分の店だけよければいいっていう状況じゃない。書店という存在が危機的状況なんだから、みんなで力を合わせて盛り上げないと」
 地元の老舗店主。
「どれほどの効果があるのかはわからんが、とにかく新しい取り組みをやろうとしている、それだけでも立派だ。単独でもうまくやれるのに、同じ吉祥寺の本屋だからいっしょにやろうという、その気持ちがうれしいじゃないか。我々、協力したからって失うものはない」
 否定的意見も出る。理子は思いをぶつける。(本屋の敵はネットとかコンビニとか新古書店とかいろいろあるが)
「一番の敵は本に対する無関心さだと思う。本を読むことが面白い、本屋に行くことが楽しい、そういう想いを人々が失ったら、私たちの仕事はお終いだ、そう思うんです。すこしでもそういう状況に逆らってみたいと思ったから。ひとりでやるより、多くの書店が集まってやった方が、たくさんの人の関心を引き付けることができると思ったから。……」
 ブックイベントに積極的な書店員の発言。
「このフェアをやったところで、書店業界の悪い状況が動くはずもないけれど、それでも、やれば俺たちが楽しめそうじゃない。楽しいということだって、十分な見返りだと思うよ」 
 ある書店員の顔を思い浮かべる。
 さて、理子の恋は? 
 もともと実る恋ではなかった。理子を支えてくれた副店長。都心の店に栄転。彼がイベントのときに書いたPOPが残る。E・フロム『愛するということ』を推薦。
「人生の折々にこの本を読み、自分は人を愛する資格があるのだろうか、と考える。素晴らしい出会いがあった。だが別れることになってしまうのは、相手のせいではない。自分が相手にふさわしくないからなのだ。でも、愛した記憶は消えない。たとえ目の前にいなくても、心から愛した相手との思いでは自分を高め、これからの一生を照らしてくれる。そんなことをこの本は教えてくれるのです。」
 碧野は理子の言葉で締めくくる。
「こういう出会いを糧に、私はこれからも生きていくのだ。」

 出会いを糧に、人とも本とも。
(平野)