週刊 奥の院 4.7

■ 大竹聡 『ギャンブル酒放浪記』 本の雑誌社 1600円+税

本の雑誌』S編集長とぶらりぶらりの気まま酒の最中に思いついた「ギャンブル酒」

……
「いいですねえ、鉄火場酒。格好いいや!」
 てな乗りでもって話はトントンと進み、『下町ぶらりぶらり』を単行本にしていただいたのとほとんど同じタイミングで、アタシたちふたりは賭け事をしながらの酒をめぐる仕事――なんとも申し訳ない気がいたしますが、これもまあ仕事なんでございます――を始めることになったわけです。
 それにしても鉄火場とは奮った言い方ですね。どうしたって花札やサイコロ、昔の麻雀なんかを思い浮かべてしまう。(カードやルーレット系はカジノのイメージ)なんか言葉の感じとしては鉄火場のほうがはるかにスリリングで肌をひりひりさせる感覚がある。……

 ボートレース、地方競馬、競輪、オートレース、「賭け+呑み十二番勝負」。
 2012年9月前橋競輪最終レース。凹みを取り戻したいが、帰りの飲み代を考える。(このへんのセコサがいい)

……車券はとれなかった、負けて清々しい、すばらしいレースだった。決して負け惜しみを言っているのではない。(観客は負けた選手に拍手)
「ああ、いいもん見たなあ!」
 おSさんも晴れ晴れとした表情をしている。当たってくれー! と胸の奥で念じた車券はかすりもしなかったけれど、なにか、それを超える気分がわいてくるようなのだ。
 競輪、おもしれえなあ……。そんなところだろう。

 
 目的の店のモツ焼きを楽しみに帰途に。高崎駅売店で買った缶ビールを電車内で飲む。つまみはジャガリコとベビースター
 

 なんとも締まらない。豪勢のごの字もない。でも、かといって惨めな感じでもないのだ。なんだろうな。この感じは。すっかりカネをすっちまったのに妙に晴れ晴れとしている。
 早く、あのうまいモツ焼きを喰いながら、ホッピー飲みてえ……。列車が大宮に近づくにつれ、その思いはムクムクと膨らんでいくようだった。

 うまい酒を飲むための前奏曲

(平野)