週刊 奥の院 3.13
■ 立花隆 薈田(わいだ)純一写真 『立花隆の書棚』 中央公論新社 3000円+税
立花の自宅兼仕事場「ネコビル」(地上3階+地下2階+屋上+階段)、三丁目書庫、立教大学研究室にある全書棚の写真。書棚と蔵書について立花が語る。
写真は薈田が開発した「精密書棚撮影術」によって一段ずつ撮影し、全体を完全な平面に再構成。
「本の表面あるいは背中の細かい文字も、細かな傷や汚れも、ほぼ完全に記録される」
たいへんな手間がかかる作業。ネコビルだけで10〜20万冊。ものすごくアバウトだが、書棚だけではなく、床にもあるし、段ボールにも本がある。
……しかし、このように書棚の全容をパチパチ撮られるというのは、あまり気持ちがいいものではない。自分の貧弱な頭の中を覗かれているような気がする。さして美しくもないからだのヌード写真を撮られているような気がしてきたりもする。
この企画が持ち上がったとき、実は私は必ずしも乗り気ではなかった。書棚は、毎日毎日生きて動いている。一番使う部分こそ、休みなく動いている。もともとそういう性格を持った書棚を、スナップショット的に撮ることにどんな意味があるのだろうと思った。……
撮影と本作りに付き合っているうちに気づく。
書棚を見ると自分の「メイキング・オブ」が見えてくる――本の背中を見ただけで、その本を買って読んだ時期の思い出が次々によみがえってくる。
「何を考え、何に悩み、何を喜びとしていたのか……」
それから、「書く予定にしていたが、まだ書いていない本というのがけっこうあるということ」。
ざっと10冊くらい。
「やりかけたままで途中になっている仕事は、ぜひ果たしておきたい」
第一章 ネコビル一階 「死」とは何か 日本近代医学の始まり 分子生物学 春本 フロイト サル学 脳 医療 原発 ……
第二章 ネコビル二階 土着宗教としてのキリスト教 ……
第三章 ネコビル三階 西洋文明を理解するには聖書は必読 ……
第四章 ネコビル地下一階と地下二階 自動排水装置 取材は「資料集め」から ……
第五章 ネコビル階段 ブルゴーニュからヨーロッパを知る ……
第六章 ネコビル屋上 コリン・ウィルソンの多角的世界 ……
第七章 三丁目書庫+立教大学研究室 お気に入りはバーン=ジョーンズ ……
書名索引含め全650ページ。
「性」の書棚に『血と薔薇』発見。
……この雑誌を刊行し始めたときに、実はぼく、この会社で編集の手伝いをやっていました。いわば、この伝説の雑誌の“内輪”の人間だったのです。
ちょうど文春をやめた直後の頃でした。たまたまこの雑誌の編集に関わっていた連中と親しくしていて、編集部に出入りしていたんですね。そんな経緯があって、手伝うことになりました。
(平野)
内藤さんの本には出てこなかった話。