週刊 奥の院 3.4

 平凡社3連発!
■ 『日本の美女』 平凡社コロナ・ブックス 1800円+税 
 日本人画家が描いた「美人画」(日本画を中心に)の数々。
目次
美女のしぐさと情景
【身体表現の美しさ】 目もとが涼しい美女たち 黒い瞳の美人 三日月眉の美女たち 細面の美女 うなじの美しい人 しなやかな指先美人 柳腰の美人 ……
【美少女から芸妓まで】 美少女たち 扇子美人 傘美人 音色美人 ……
エッセイ
美人画というジャンル」 谷川渥
「ある眼」 竹久夢二  ……
コラム
「美女の容姿と好みは東西に分かれる」
「東男に京女」
「美女と幽霊 骨まで愛して」 ……

 谷川渥のエッセイより。
 美人画とは何か?
 西洋美術史では、ヴィーナスも聖母も美人画という括りにならないし、《モナ・リザ》も《真珠の耳飾りの少女》も美人画とは呼ばれない。
「裸婦像」はあるが。

……そこに美人画に相当する言葉も概念も見出すことは難しい。風俗画でも肖像画でもない、美人画というジャンルは、どうやら日本美術に固有のものであるといってよさそうである。
(主題としての「美人画」は浮世絵からと考えられる)
……「美人」の内実は、まずなによりも遊女、芸妓、花魁、さらに武家あるいは町屋の女房や娘にまで及ぶが、絵師たちはそうしたさまざまな階層、身分に属する女性たちの多彩な美しさを追求したのである。対象となった美人たちは、しかしけっしてその固有名詞にまで遡られることはない。仮にモデルが具体的に判明する場合があったとしても、やはりそれはあくまでも遊女であり芸妓なのである。
(西洋美術の美女は宗教的存在でも貴婦人でも市井の娘でも、ほとんどに固有の名前がある)
 ある階層・身分に属する女性に典型的な衣裳(モード)を装わせて、自己の理想とする美人の容貌を定着しようとした。……

 素人に手を出さなかったということか?

 カバーの絵は、北野恒富(1880〜1947)の「婦人」(ポスター原画、1929年)。大阪高島屋での展覧会ポスター。
「巴里の香りを桃山調にとけこませた」総絞り友禅。与謝野晶子の歌が添えられている。
「香くはしき近代の詩の面影を装ひせんと明眸のため 晶子」
 本書の構成。目や顔、うなじ、黒髪などの観点からだけではなく、うしろ姿、指先、あしゆび、素肌にまで着眼する。すばらしい。さらに、「扇子」「傘」「三味線」など道具としぐさから「美人画」を観賞。。
(平野)