週刊 奥の院 2.17

■ 井上理津子『名物「本屋さん」をゆく』 宝島SUGOI文庫 600円+税 

『さいごの色街 飛田』の井上理津子が、東京都都内の新刊書店・古書店セレクトショップ・ブックバー60ヵ所を紹介する。
 井上が求める本屋は、

 例えば、洋服を買いに行くと、店員さんから「どんなものをお探しですか」と声がかかります。お寿司屋さんに行くと、「今日は生ダコ、いいのが入ってますよ」などと案内があります。本屋さんにもそんなふうな店があれば面白いのに、と思って探したら、あったあった。結構ありました。
……いい本屋さんはいい居酒屋と同じだと思います。いい居酒屋は、手に入った大切なお酒をきちんと温度管理しておいしく飲ませ、飲み口に合う料理を供します。それと、そっくりだなあと。構ってほしいオーラを出すと店主は構ってくれ、一人で本棚と向き合いたいときは一人にさせてくれます。……

 個人的に行ってみたいお店。
 キントト文庫(神保町) 昭和、風俗等の本が並ぶ、駄菓子屋のような古書店
「店名のキントトは、幼児言葉で金魚のこと、語感から、ブリキやセルロイドの金魚のおもちゃを連想しませんか? 私は深川育ちなので、子どものころ家の近所にいっぱいあった、駄菓子屋のような本屋にしたかったんです」(店主・山本さん)
 大川橋蔵のメンコ、セルロイドのお面、蔦谷喜一の塗り絵。乗り物、カメラ、映画、歌謡曲、相撲、芸能、寄席など1万冊。
 何がいいって、エロの分野も得意。
 
 杉野書店(中目黒) 「50円均一」と「エロ本」が充実
「50円均一」、単行本、文庫、マンガ、教科書などごちゃまぜで約700冊の棚。
 エロ本、アダルトビデオ・DVDが約1万冊、500円or700円。
 他にもいろんなジャンルの本、全部で10万冊。

 
 協立書店(浅草) 「エロ本の品揃え東京一」とささやかれる新刊書店 
 アポを取ると、「取材? ヤダなあ。宣伝は不要」とすげなかったが、店主・戸澤さんは「それなりに対応してくれた」。
 昭和22年、焼け跡から父上が芸能、映画、演劇の古書で始めた。永井荷風井上ひさしもお客だった。立地場所は「浅草十二階」跡地。昭和30年頃から新刊を置くようになった。ストリップ劇場が近くに。

 ともあれ、店内を見渡すと、す、す、すごい。エロ雑誌ってこんなに莫大量が発行されていたのだ。目がくらむ。100や200できかない。何百種類もありそうだ。…… 

 ギャンブル系、実話情報誌も。
 店の奥に、網野善彦漱石全集、美術書。店主には『日本のガラス その見方、楽しみ方』(里文出版)の著書あり。

 
 街道文庫(北品川) 古書。 全国の「街道」の本が1万冊
 旅の本屋のまど西荻窪) ガイドや地図だけでない「旅」の本がずらり
 バサラブックス(吉祥寺) 古書。 約6坪の店内にリトルプレス、マンガ、映画からアナーキーまで 
 茶房高円寺書林(高円寺) 新刊と古書。 全国から届く「豆本」の棚に注目
 リズム&ブックス(代々木公園) 古書。 高度成長期〜バブル期の「ヘンテコリンな本」
 ブックハウス神保町(神保町) 1万6000冊が並ぶ絵本と児童書の専門店
その他、気になるところばかり。
 
 カバーの写真は「古本お休み処ブック・ダイバー(探求者)」(神保町) 「硬派なサブカルチャー」の本が1万冊
(平野)