週刊 奥の院 2.2

■ 大崎梢リクエスト!  本屋さんのアンソロジー』 光文社 1600円+税
本と謎の日々  有栖川有栖   
国会図書館のボルト  坂木司
夫のお弁当箱に石をつめた奥さんの話  門井慶喜
モブ君  乾ルカ
ロバのサイン会  吉野万里子
彼女のいたカフェ  誉田哲也
ショップ to ショップ  大崎梢
7冊で海を越えられる  似鳥鶏
なつかしいひと  宮下奈都
空の上、空の下  飛鳥千砂

 大崎は元書店員。デビューはその経験を盛り込んだ短編集で、シリーズ化された。出版営業マンのシリーズもある。本書の企画が持ちあがったとき、

……どう考えても、わたしにはむりむり。冗談でしょう。即刻笑い飛ばしたのですが、しかし、「たとえば本屋さんとか」という言葉に、「え?」と腰を浮かす。だって、どうしようもなく魅惑的なフレーズではないですか。(自分もいろいろ書いたが)じっさいの書店で起きる出来事、本を巡るやりとり、お客さんの思い、書店員の気持ち、謎やエピソード、喜び、悲しみ、口惜しさ楽しさは、もっともっと多種多様にあるはず。ぜひともそれを読んでみたい。……

 ほとんどのお話は当然書店員が主人公。
 長身・ニヒル・甘い声で物知りだが、推理好きの店長。
 夫婦ゲンカで仕事が手につかない外商マン。
 見るからにパッとしないお客が気になるバイト女性。 
 本屋でロバのサイン会(写真撮影会)、その後。
 本屋に併設されたカフェで読書しながら居眠りする女性。
 「上・下」2冊本、「上」を2冊売ってしまった……。
 店のお客たちが協力して万引き犯を捕まえる話。
 大好きな本屋で高校生がイタズラするのを見逃せない大学生。
 本好きの母親が亡くなって、読みたい本を見つけられない中2男子が本屋で同年代の女の子と知り合うが……。
 大型書店の出店、写真集マニアの心情、本に託した暗号、就職活動、書店員とお客との交流などが絡む。
 多くの書店員のうち、私と同姓の女性が登場する話がある。コヤツが面倒臭い女(失礼)で、恋人が海外留学することになってギクシャク。それを仕事場に持ち込んで周囲を混乱させる。
「ほんま、邪魔臭いやっちゃ、平野!」
(平野)
 HP更新。http://www.kaibundo.co.jp/index.html
「眼」は留守番話。