月曜朝礼 新刊紹介

【文芸】 クマキ 
■ 斎藤美奈子 「名作うしろ読み」 中央公論新社 1500円+税
 読売新聞連載。古今東西の名作132冊を読み解く文芸評論集。その手法は「ラストの一文から」。
 
 たとえば、漱石坊っちゃん』。なぜ主人公は「坊っちゃん」なのか?

……小説をうしろから読み直すと、ようやく理由は判明する。
〈清のことを話すのを忘れていた〉と前置きして彼が最後に語るのは、終生「おれ」の味方だったばあやの清(きよ)のことである。〈死ぬ前日おれを呼んで坊っちゃん後生だから清が死んだら、坊っちゃんのお寺へ埋めてください。お墓の中で坊っちゃんが来るのを楽しみに待っておりますと言った。だから清の墓は小日向の養源寺にある。〉

 主人公を「坊っちゃん」と呼んだのは、ばあやの清。
 それを念頭に読み直すと、「痛快な勧善懲悪劇というイメージ」は「修正を迫られる」。
「一度は書きかけて挫折した清への長い手紙、あるいは追悼だったのではないか」
目次
1 青春の群像 『雁』 『風立ちぬ』 『檸檬』 『潮騒』 『野菊の墓』 『友情』 『車輪の下』 『若きウェルテルの悩み』 『竜馬がゆく』 ……
2 女子の選択  『細雪』 『二十四の瞳』 『放浪記』 『赤毛のアン』 『あしながおじさん』 ……
3 男子の生き方 『蒲団』 『野火』 『蟹工船』 『学問のすゝめ』 『老人と海
『グレート・ギャッビー』 ……
4 不思議な物語 『雪国』 『風の又三郎』 『変身』 『ドン・キホーテ』 ……
5 子どもの時間 『兎の眼』 『銀の匙』 『クマのプーさん』 『十五少年漂流記』 ……
6 風土の研究 『富嶽百景』 『武蔵野』 『城の崎にて』 『日本奥地紀行』 『沈黙の春』 ……
7 家族の行方 『黒い雨』 『楢山節考』 『夫婦善哉』 ……
【新書】
■ 成毛眞 『面白い本』 岩波新書 700円+税 
 1955年北海道生まれ。元・マイクロソフト取締役社長。現在は書評サイトHONZ代表。
HONZ」ではノンフィクションを紹介。子どもの頃の一番最初の「面白い本」は「水滸伝」だった。
「もし水滸伝に出会っていなければ、こんなに本を読んでいなかったかもしれない」と言うほど。小学生高学年では百科事典を読み進め、大人になってノンフィクションが「面白い本」になった。

 読書は道楽。そういう割り切りが大事だと私は思っている。成功するためにとか、何かの役に立つようにとか、目的をもって本を読むのはおカド違いというものだ。それではせっかくの面白い本も、面白くなくなってしまう。……

【芸能】 アカヘル 
■ 川本三郎 『美女ありき  懐かしの外国映画女優讃』 七つ森書館 
1800円+税

 エリザベス・テーラーヴィヴィアン・リーのような大女優から、憂い顔のアイドル、クリスティーネ・カウフマンまで―― 20世紀の映画史を彩った女神たち。

 写真図版142点。
 

 昔の女優たちはどうしてあんなにきれいだったのだろう。いま彼女たちの写真を見ていて改めてその美しさに溜め息が出る。
 家庭のなかにあるテレビと違って、映画は映画館で見る特別なものだった。そこに現れる女優たちは普通の日常から遠く離れたところにいる夢の存在だった。仰ぎ見る憧れの美女だった。この感覚は、生まれた時からテレビを見て育った世代には分かってもらえないかもしれない。……

【雑誌】 
■ 『あまから手帖』2月号 クリエテ関西 743円+税
 第1特集 進化する和食の新店を徹底取材 攻める和食
 第2特集 切り絵作家 成田一徹追悼 今宵、モノトーン劇場へ  成田一徹の愛した店、人、街

◆ ヨソサマのイベント
■ 太田治子が語る「陳舜臣日曜美術館。そして司馬遼太郎 
3.10(日) 開場:午後1時30分 開演:午後2時/終演:午後3時30分
神戸市立博物館 地階講堂
* 入場無料ですが予約制、往復はがきにて。定員130名。
問い合わせ:特定非営利活動法人リ・フォープ 078−366−0536


■ W親子 トーク&ライブ 谷川俊太郎谷川賢作 小室等+こむろゆい 言葉とうたのコンサート 
 

3.9(土) 14:00開演 宝塚ソリオホール 
* 参加費1000円 申込は往復はがきにて。定員300人。
こちらを。http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/tezuka/event.html#20pre
問い合わせ:宝塚市手塚治虫記念館 0797−81−2970

(平野)