月曜朝礼 新刊紹介

【文芸】　クマキ　
■　安部公房　『（霊媒の話より）題未定』　安部公房初期短編集』　新潮社　１６００円＋税
　
　没後２０年記念出版。安部は１９４８年２４歳でデビュー。２０１２年新発見の「天使」を含む、デビュー前後の未発表作品集。
　解説・加藤弘一

　安部公房は前衛的とか都市的、無国籍的等々と形容されてきた。ところが本書の作品は前衛的でも都市的でも無国籍的でもない。ここには世に喧伝されてきた安部公房とは別の作家がいる。しかしよくよく読めば安部公房その人なのだ。……

　表題作は、１９４３年旧制成城高校在学中の作品。敗戦直前に満洲の家族のもとに戻り、その後引き揚げ。その間ずっとこの原稿を持ち歩いたらしい。
　田舎の村々を巡る曲馬団から逃げ出した二人の孤児、パー公とクマ公と村人の話。放浪する者が定住できるのか。

――おいパー公一体お前どうしたんだい。――
――うん昨日見たんだ。――
――何を。
――俺ねえ、よくこんな事を感じる事があるんだ。どこかあったかそうな部屋に二人の子供とその両親（ふたおや）が机をかこんで坐って居るのさ。そしてその上で、じーじーと音を立て乍らランプがもえて居る。――
――ああ、そりゃお前誰かに話で聴いたか、本で読んだかしたんだろが。うん若しかしたら夢で見たのかも知れねえな、それで。――
――俺あ昨日確かにその人達を見た様な気がするんだ――
――それで――
――うん、それが何だか俺の兄弟か両親の様な気がしてならねんだ。……俺は此の村の人達がなつかしく思えるんだ。――
……

■　『大崎梢リクエスト！　本屋さんのアンソロジー』　光文社　１６００円＋税
　書店員から作家に転進した大崎が人気作家にリクエストして書いてもらった、本屋をモチーフにした作品集。
　飛鳥井千紗、有栖川有栖、乾ルカ、門井慶喜、坂木司、似鳥鶏、誉田哲也、宮下奈都、吉野万里子。もちろん本人も。
　在庫僅少ゆえ、追加が入荷したら詳しく紹介しよう、と思う。
『近藤史恵リクエスト！　ペットのアンソロジー』
『坂木司リクエスト！　和菓子のアンソロジー』　も同時刊行。各１６００円＋税。　

【芸能】　アカヘル　
■　『相倉久人のジャズ史夜話　　８０の物語と１６０の逸話』　アルテスパブリッシング　２４００円＋税
　１９３１年生まれ。６０年代学生時代からジャズ評論を始めた大御所による「ガイドつきジャズ散歩」。

　ジャズの歴史をそれが生まれるはるか以前の段階まで遡って、現在にいたるまでの動きを時間軸に沿って歩いてみる。そこではごくありきたりなやり方だが、訪れる時代が変わり訪れる場所が変わるたびに、立ち止まってあたりをキョロキョロ見回し、なにか目につくものがあれば、カメラをそっちに向けてその風物なり人物なり現象なりに焦点を合わせる。ついでにその時代背景やメディア事情、人間関係にまつわる逸話……などをコラムにしてちりばめる。それと並行して日本のジャズ関係のエピソードを重ね合わせ……。

【海事】　ゴット　　
　
社団法人　日本海事集会所発行の船のデータ集。
当店２階の隠れたベストセラーのひとつ。いずれも国土交通省海事局の協力。

■　『内航船舶明細書　２０１３年』　日本内航海運組合総連合会協力　　２００００円＋税　　総トン数１００トン以上の内航登録船約３０００隻の明細（船名、所有者、船種、登録長など６７項目）。

■　『日本船舶明細書　Ⅰ　２０１３年』　１９５００円＋税
　１００総トン以上の日本籍船（内航許可船および５００総トン未満の漁船を除く）１８００隻、信号符字を有する船舶約６５００隻余の明細。

■　『日本船舶明細書　Ⅱ　２０１３年』　１００００円＋税
　２０総トン以上１００総トン未満の日本籍船舶および１００総トン以上５００総トン未満の日本籍漁船約２８００隻の明細。
（平野）
『週刊ポスト』の「松田哲夫ニッポン元気印」はクラフト・エヴィング商會。