週刊 奥の院 1.17

■ 中上健次集』 全十巻 刊行開始 インスクリプト 
第一回配本 第七巻 「千年の愉楽、奇蹟」  3700円+税
解説 阿部和重  解題 高澤秀次
月報 北島敬三『奇蹟』によせて  津島祐子 アニ中上健次の夢[再録]  
紀和鏡 夢の回路――中上健次と私[連載1]  
装幀 間村俊一  カバー写真 港千尋
二〇一五年四月完結予定
 阿部和重 流血と清流――そして/あるいは失禁という「奇蹟」 より

「路地」ではよく血が流れる。屋外でも屋内でも、男女の鮮血が流れまくっている。流れるのは血液にかぎらない。精液や愛液、涙や汗や唾といった体液のしたたり落ちる様にもしばしば出くわすし、ときにはそこに雨が降りしきるから衣が乾く暇もない。
 つまり「路地」とは、ひどく濡れやすい(原文傍点)場所であり、そこに住まう人々もまたしょっちゅうなんらかの液体にまみれている。盛り場ではアルコールが盛んに飲まれ、覚醒剤の水溶液を体内に注入したがる者も後を絶たぬため、アル中もシャブ中も珍しくはない。刃傷沙汰により血を浴びてしまい、助産婦の釜で沸かしたお湯で汚れた身を洗う若者もいる。場所柄その姿は、新生児が産湯に浸かる光と重なって見えてしまう。……

(平野)
◆ うみふみ書店日記(3)
1.10 木曜
休み、夕方まで「奥の院」。
「朝日」記事。与謝野晶子未発表16首発見、倉敷「薄田泣菫文庫」から。平塚らいてう青鞜』原本9冊、東京の古書店河口慧海の日記帳、親交のあった実業家のお孫さん宅。
紙は偉大!
夜、大阪曽根崎。「大阪屋おでんの会」の流れで、人文系出版社と書店員が集まる。総勢40名。うち書店員は15名、(J)10名、(紀)2名、(喜)1名、(清)1名、(海)1名。来年も呼んでもらえることを励みにして1年働こう、と思う。
関西出版界の重鎮Kさん、出版営業の仕事は辞め、作家業宣言。
今年還暦が3名。
おなじみの人、久しぶりの人、初対面の人、この会でしか会えない人。相変わらず美しい人、さわやかな人、むさくるしい人。
楽しい会です。幹事のIさん,Nさんに感謝。新規GFも登録。
でもね、私、酔っぱらって大失敗。お酒こぼしてTさんに迷惑。お許しを。
帰りはYさんと阪急電車

1.11 金曜
心地良い二日酔い、そんな日もある。
文芸担当Kより、長嶋有さんのサイン本が入荷したによってブログに書け! と要請(命令)。
昨日発売の、ちくま文庫『みみずく古本市』が売り切れてしまっていた。ちくま文庫発売日がまたも休みに当たる。人文棚用に注文。
元J堂Jさん、岡山から年賀状。

1.12 土曜
児童書・Tより、原稿書けと依頼(命令)。A新聞の夕刊コラムの順番が【海】に回ってくるよう。ブックフェアや特集というくくりで、ベストセラー紹介と差別化せよと。あんまり難しいこと言われても、おっさんはでけんぞ!
「明日の本屋をテキトーに考える会(通称・明日本)」という名の呑み会召集状を会員諸氏に送付。

1.13 日曜
元町にアトリエを構えるアーティスト・Wさんから編集者Iさんを紹介される。このたび『大森実ものがたり』(街から舎)を出版。すぐに注文。
本屋出身作家Uさん来店、顔を見るなり「知ってるか?」。何のことか分からず。「9日にMさん(本屋業界大物)と話をしていて急に倒れてな……」と言うので、Mさんが倒れたのかと思った。だってUさんは目の前に元気でいるんですから。よく聞いてみるとUさん自身が倒れて救急車で運ばれたそう。
作品執筆という作業が身を削り、神経をすり減らすものであること想像できます。くれぐれもお身体を大切にしていただきたい。
N教授、「明日本」出席の返事、一番槍! トンカさんは古本市で欠席、残念。野郎共が嘆くことでしょう。

1.14 月曜
休み。雨の成人式。東京は積雪。ブログ準備と「海会」原稿。年末から溜まっていたTV録画消化。

1.15 火曜
高見順賞」に川上未映子『水瓶』(青土社)。
週刊朝日』1.25号の「マリコのゲストコレクション」は松岡正剛
ビル全体が本という新事務所と、「松丸本舗」撤退の真相。
林真理子さんを見直した。
「私はうちの近所の本屋さんを大切にして、『真理子コーナー』をつくってもらって、そこで私の本を買ってくれた人には漏れなくサインをすることにしています。そうすると、全国からそこに発注が来るんですよ。……」
友人作家にも「私たち作家が小さい本屋さんを大切にしましょう」と言ってくださっている。さすが本屋の娘さん。
トーハンMさん当店訪問中、本社から「明日の荷物は大幅に遅れる見込み」のケータイ連絡あり、と。

1.16 水曜
荷物、トーハン少し遅れ。日販は昼ごろ着。共に週刊誌5点ほど入荷せず。
そろそろ日記・手帳を引っ込めて、【海】のフェアに。
文芸クマキは、「夏葉社と『冬の本』ブックフェア」。
私は、「新年早々悪口雑言罵詈罵倒」。「新島八重会津・歴史春秋社と古本(ロードス&つのぶえ)も。
歴史春秋社さんから「会津若松観光案内」を送っていただいています。 
先週のベストセラー
(1) 郄田郁  あい  角川春樹事務所
(2) 川本三郎 そして、人生はつづく  平凡社
(3) 百田尚樹 海賊と呼ばれた男 (上)  講談社
(4) 同上            (下)
(5) 塩野七生 想いの軌跡  新潮社
(6) 東川篤哉 謎解きはディナーのあとで 3  小学館
(7) 今野敏  欠落  講談社
(8) 芝田真督 神戸懐かしの純喫茶  神戸新聞総合出版センター
(9) 伊集院静 別れる力  講談社
(10) 村上龍  55歳のハローライフ  幻冬舎
 郄田郁強し! (8)以外すべて文芸書。

芥川賞黒田夏子直木賞は、朝井リョウ安部龍太郎。おめでとうございます。
私の予想は全ペケ。