週刊 奥の院 1.13

■ 今和次郎考現学  暮らしの“今”をとらえる〈目〉と〈手〉』 河出書房新社 道の手帖 1600円+税
第1部 考現学は終わらない
● 特別対談 世界規模でとんがっていた知性――今和次郎入門  藤森照信×黒石いずみ 
● 今和次郎――身体とモノの「交渉」としての造形に着目した考現学者  祐成保志
● 今和次郎、吉田謙吉両氏編著の「モデルノロヂオ」  川端康成
● 今和次郎さんと「気が合う」と思った日のこと  南伸坊
……
第2部 今和次郎の人と思想
● 『日本の民家』再訪から見えてきたもの  御船達雄
● 今先生と民家論  竹内芳太郎
● 今和次郎の歩き方――『日本の民家』再訪の旅から  菊地暁
● バラックがかいま見せるもの――風俗と建築と  井上章一
……
 著作集未収録コレクション、インタビューなど。
 川端康成の文章は、1930年『モデルノロヂオ』(春陽堂)出版に際して書いたもの。

「モデルノロヂオ」(考現学)とは、この「学」の開拓者である今和次郎氏等が、「現代風俗或いは現代世相研究に対して採りつつある態度及び方法、その仕事全体」を、「考古学」と対向的に名づけた名称である。つまり、現代人の生活振りの「採集、調査、集計、考察の仕事」を指すのである。考古学と同じような方法で現在を取り扱い、考古学が史学と交渉するように、考現学社会学の補助として働こうというのである。……
「考古学」の困難はその材料の少なさにある。しかし、「考現学」の困難はその材料の多さにある。いかに多くの費用と、いかに多くの人を使ったとしても、「考現学」の材料を完全に集め得ることは、想像も出来ない。……廣漠に、そして複雑に、刻々生まれ、また消えて行く、現代世相風俗に対して、「考現学者」が今後よりよく戦うことを、私は説に希望する。こういう本が作家にとってもいかにありがたいものであるかを知るからである。……

 今和次郎(1888〜1973)、弘前市生まれ、津軽藩典医の家柄。柳田國男門下で民家研究。農村住宅・副業で農村を視察。関東大震災後のバラック建築スケッチを契機に、都市生活研究。
 インタビューは1966年、聞き手は川添登

(今)おれには、いわゆる建築としては民家を見ないという傾向があるな。なんというか、生活が主体なんだな。屋根の形がどうなっているというようなことは、いわばおまけ(原文傍点)の関心で、生活のための工作物として民家をみているな。……関東大震災で東京が焼野原になって、そこでいとなまれる生活とその情景にたいして、それまで農村を調べていたのと同じ興味でぶつかっていった。そこで生まれたのが考現学だな。……

考現学」、研究の成果を発表するためにもっともらしい名前をつけたそう。開店したばかりの紀伊國屋書店の展覧場で、大正15年か昭和元年。新聞報道で連日満員。特に熱心だった朝日の記者が尾崎秀美、紀伊國屋の担当の女性と恋仲だった(のち結婚)というエピソードも。
 銀座カフェー嬢の服装、丸ビルモダンガールの散歩コース、本所深川女に入用な品物、省線電車内の風俗、郊外行商雑景、東京場末の女人頭髪調べ……。
 今和次郎コレクションは工学院大学図書館にある。
http://www.lib.kogakuin.ac.jp/collection/kon/index.html
(平野)
ヨソサマのイベント
■ 川柳作家 時実新子展  
2.1(金)〜4.14(日) 神戸文学館(毎週水曜日休館) 入館無料 (但し、記念講演会は参加料200円)
TEL 078−882−2028
http://www.geocities.jp/miyamoto_tadao/