週刊 奥の院 1.12

■ 『群像』 2月号 講談社 905円+税 
特集 12星座小説集  橋本治佐伯一麦島田雅彦ら12名の作家が自分の誕生星座を題材に。
対談 文学の力――クレオール的未来のために
大江健三郎 × パトリック・シャモワゾー  司会 堀江敏幸

 パトリック・シャモワゾー  1953年フランス海外県カリブ海マルティーク島生まれ。邦訳、『カリブ海偽典 最期の身ぶりによる聖書的物語』(紀伊國屋書店)、『クレオールとは何か』(平凡社ライブラリー)、『クレオールの民話』(青土社)、『幼い頃のむかし』(紀伊國屋書店)。『テキサコ 上・下』(平凡社)は絶版。
 島の元々の住民はヨーロッパ人到来によりほぼ壊滅。サトウキビ畑の労働力としてアフリカ人が奴隷として連れてこられた。

(堀江)……様々な地域から集まってきた母語を異にする人々が、意思疎通のために、植民者が使うフランス語をたたき台にしながら生活の中で作り上げたのが、クレオール語と呼ばれる言語です。シャモワーゾさんは、そのクレオール語の響きをフランス語に融合させた新しい語りの言葉で、いくつもの小説を書かれていますが、特にその名を広く知らしめたのは、一九九二年に発表され、ゴンクール賞を受賞した長篇小説『テキサコ』でした。

(大江)(1995年のフランス核実験再開に抗議、文学シンポジウムをボイコット以来訪仏せず。東日本大震災後の反原発集会でフランス原発問題討論会に誘われ訪仏。会議後テレビ局で……)番組の収録が開始され、その人物が話し始めました。やっと気持がほぐれて、話を聞いているうちに、私はこの声を覚えている、と思ったんです。フランス語でいうなら、この人物が発しているvoix、声つまりかれの文体を私は知っていると、そのうちに、どのような作家の小説で聞きとった(原文は傍点)声であったかを思い出しました。(気に入った本はノートに写して音読する習慣)

(シャモワーゾー)……私は大江さんの本を読み、文学的な軌跡を追うことで、自分自身の手がかりをたくさん見出すことができました。とりわけ「ヒロシマ・ノート」のおかげで、自分の置かれている状況を、改めて発見することができたのです。この本は特別な書き方がなされています。ディテールをメモのかたちで残すという点的な方法で、「考えのおよばないようなこと」「受け入れがたいこと」を摑み取り、それを包囲しながら本質を絞り込もうとしている。『ヒロシマ・ノート』で実践されているのは、「考えにくいもの」に対する体験へのアプローチだったんです。
 私の故郷のマルティニークでは、奴隷貿易という、やはり「考えられない」ような事実が何世紀も続いていました。マルティニーク島の文学は黒人奴隷の売買という暗黒の歴史と無関係ではいられないことを、私は「ヒロシマ・ノート」を通じて、本質的に理解できたのです。……

 ぜひ全文を。
(平野)
【文芸】クマキより。
 長嶋有『本当のことしかいってない』 サイン本が入荷。 今のところ西日本では【海】のみ。全国でも数軒だそう。
 長嶋さんはいつも一言書いてくださる。今回5種類。
「ウィーン ガシャ」 
「渚のしやかれ!」 
ラグビー試合 二〇一三!
おいしいごちそう すてきなワイン あかるい太陽!
なんかもう 横綱相撲!

■ 本の雑誌』 2月号本の雑誌社・648円+税)の特集は「超専門出版の時代がきたぞ!」
● おじさん三人組、専門出版社に行く!  舵社 「愛石」編集部 柴田書店 農文協 ニコリ 
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