週刊 奥の院 1.5

■ 『東京人』 2月号 都市出版 857円+税
特集 江戸の理系は世界水準

日本で初めてオリジナルの暦を作った渋川春海、 
独自の筆算法を確立し、西洋よりも早く行列式を発見した関孝和
本草学、エレキテルの復元や発明など、理系のトップランナー平賀源内、
世界に先駆けて、全身麻酔手術に成功した華岡青洲
全国を測量し、精密な日本地図を感性させた伊能忠敬
からくりの技から万年時計、蒸気機関車を生み出した田中久重……。
江戸時代に花開いた理系人たちの力、モノづくりの技を一挙公開!

対談 モノづくり ニッポンの原点  荒俣宏×鈴木一義(国立科学博物館・科学技術史グループ長)
宣教師がもたらした南蛮文化  大石学
からくり 庶民の好奇心を刺激したエンターテインメント  鈴木一義
測量・地図 国の「かたち」が初めて正確に描かれた  三次唯義
本草学 幕府の後押しで、薬物学から博物学へと展開  吉田忠
染織 江戸のモノづくりと様式の美  小澤弘
遺伝学 空前の朝顔ブームを生み出したメンデル以前の「遺伝的」発想  平野恵
他、発酵、和算、天文暦学、医学、砲術、土木・建築。
殿様の科学熱  紱川眞木
幕府の理系力  大石学

 荒俣・鈴木対談より。
からくり儀右衛門(田中久重)の万年時計を見ながら、

(鈴)西洋では時計がひじょうに発達して、大航海時代を可能にしました。西洋の時計が入って来て、日本でも大評判になります。
(荒)西洋の時計を、からくりの技術を使って和時計に組み込んで、西洋の定時法(二十四時間制)と日本独自の不定時法(一日を夜明けと日没で六等分して一刻とする十二刻制)、さらに和暦までわかるようにした。その完成のために陰陽道と西洋天文学の両方を勉強したんだから、ものすごい、そんな時計が民間で作れた。(寒暖計も)
(鈴)……養蚕や酒造の温度管理に必要なので、福島や山形あたりでは温度計がだいぶ作られたようです。(『養蚕秘録』〔1802年上垣守國〕が広く読まれ、シーベルトが持ち帰り、1848年フランスで出版)
(荒)メンデルが生まれる一八二〇年代よりずっと前ですね。遺伝の法則にしても、日本人はスッと理解しちゃう。ハツカネズミの品種改良で、これとこれを掛け合わせればブチができるくらいのことは、経験的に知っているから。
(鈴)サイエンスと技術、つまり科学と農業が早い時期に結びついて、農学が始まっていた。八代将軍吉宗実学を奨励し、青木昆陽にサツマイモの栽培をやらせたりしました。吉宗は産業の発展に役立つ知識は輸入すべきだと考え、キリスト教関係以外の洋書の輸入を解禁して、蘭学発展の契機を作りました。……ヨーロッパの数学は神の心を理解するために始まったようなところがあるけれど、日本の「和算」は遊びの中で発展した。……和算の伝統は、天文学や測量などあらゆる分野が発展する前提になりました。……伊能忠敬の全国測量にしても、測量術の基本を知っていて手伝える人たちが、どこの地方にもいたんですよね。
(荒)地方の大富豪はしょっちゅう江戸に来ていますしね。函館の回船問屋の渋田利右衛門(1818〜58)。ある時、江戸の古本屋の店先で、貧乏そうな子どもが立ち読みをしている。店の主人に聞くと「この子の父親が家に金を入れないので飯も食えない」という。そこで利右衛門は「そうかそうか、とりあえず二百両あげよう、これで勉強しなさい」と。それで育ったのが勝海舟ですよ。
(……外国語の達人、砲術、本草学、医学、土木技術……数々のエピソード)

◇ 【海】のイベント 2Fギャラリー
■ 阪神・淡路大震災 東日本大震災 メモリアル「一行詩」と「絵画」「書・華道」展 “夢”
1.12(土)〜1.14(月) 入場無料 
協力:神戸市立摩耶兵庫高等学校 華道部・書道部
後援:朝日新聞神戸総局・神戸新聞社サンテレビジョンラジオ関西
連絡先 きかんし協会 TEL 078−232−3715

■ 三人展 3つの神話、3つの起源  龍谷尚樹 悠次郎 タカシロ
“神話”をキーワードにしたイラスト展。
1.19(土)20(日) 入場無料
 
(平野)