月曜朝礼 新刊紹介

【文芸】 クマキ
■ 『冬の本』 夏葉社 1700円+税 
……冬が物語りの舞台になった本。まるで冬のような本。冬になると思い出す本。いくつものあざやかな冬のかたち……
「冬」と「本」を唯一のルールに、
「冬の本」という1つの言葉をめぐって、そこから発想できることを自由に書いてもらっていい。
 作家、出版社人、学者、漫画家、映画人、音楽家、芸人、古本屋、有名書店員に無名書店員、84名が「大切な1冊」を紹介する。巻末に筆者紹介と書誌情報。
 どのページから読んでもいい。飛ばし飛ばしでも。平野は女性のしか読まん!
街子さん ガリレオ・ガリレイ星界の報告 他一篇』(岩波文庫
ある日の医院待合室。読みかけの文庫を開く。400年前の冬の夜、天体観測するガリレイを思いながら順番を待つ。いつしか夢か現か……
「どうされましたか?」
 飾らない声がたずねる。まるでその声は、時間は永遠にあるよ、と言っているように響く。
「いくら着込んでも寒くてたまらないんです。……」
 冬の夜空を来る日も来る日も、望遠鏡で観測しつづけるほどの情熱を、私もかつては持っていたはずなのに。
「うん、そういうの、わかりますよ。」
 先生がうなずく。

エリカさん 池田澄子『拝復』(ふらんす堂
「未だ逢っていない俳句を呼ぶ。待つ。それは祈りに似ている。」(池田)
――俳句思えば元朝の海きらめきぬ
……冬を慈しみながら、必ず訪れる、春を待ちたい。
智子さん トーべ・ヤンソン『軽い手荷物の旅』(筑摩書房
「往復書簡」という短篇。日本の女の子がヤンソンに会いにいきたいと書き送る。返事は、
「作家の書いた本の中でこそ作家と出会うべきだ」
……きっとタミコはこれからもっと本を読んで物語を書いて、東京にいながら旅をしていくだろう。知らない空気をことばで感じるだろう。 
ヤンソンの本を挙げたひとがもうひとり。
ナオさん 『ムーミン谷の冬』(講談社文庫)
ムーミンは寒くなると冬眠するので作品の舞台はほとんどが夏。この1冊だけが冬。春が来る前に目覚めてしまったムーミントロール。いつものメンバーで起きているのはひとりだけ。変わり者だけが冬に活動すると思う。
……「面倒な人間関係から逃れて冬眠し、スナフキンの夢を見ながら春を待ちたい」。わたしは基本、こう思っていたわけだが、再読したところ、「物事の裏側」「裏側に住む人の生活」も覗いてみたいという欲が出てきて、やはり冬眠はしないで冬も楽しむ方がいいか、と健全な心が芽生えてきた。

【海】アカヘル
昨年末入院した話から始まる。本は野呂邦暢『小さな町にて」(文藝春秋
……フィリップ、サーバー、ギッシング、井伏鱒二木山捷平尾崎一雄上林暁。それまでぼんやりと読みあさってきた本を、自分が生まれた年に亡くなった作家も読んでいた。
 本棚に並んだ一冊一冊が、長屋の住人のようにつながりをもっていく。そのたくさんの本のあつまりが、またあたらしい一冊をえらばせる。読書というおこないは、自分にしか手にすることのない、小さな町のような本を編んでいくことだと思う。

 いい文章でしょ!
(担当者) 皆さん力が入っていて、とてもよいエッセイ集になりました。

■ リシャール・コラス 松本百合子 訳
『波 LA VAGUE  蒼佑、17歳のあの日からの物語』 集英社 1800円+税
 3.11は、初恋に浮かれる蒼佑の17歳の誕生日だった。
(帯)

あの日がすべてを奪っていった。 
家族も、初恋も、ふるさとも。
絶望の真っただ中に放り出されて
途方にくれる蒼佑の前に突然、
見知らぬ青年が現れた。
過去がなくなっても、未来は持てるのか?

(扉)
東北地方太平洋沖地震による15,872人の死者、2,769人の行方不明者、6,114人の負傷者の方たちへ 
印税は「認定NPO法人国境なきこどもたち(KnK)」に寄付される。
 著者はフランス人。日本語でも著作を発表するが、本書は本年3月フランス語で出版。現在、シャネル日本法人代表で作家。
 フランスは原発大国なので、原発事故のニュースは伝わっているが、津波については知られていない。40年近く日本と関わってきて、
「……わずかな寄付をするだけではどうしても自分の気持ちがおさまらなかった」
 と、本書を執筆。
 ボランティア活動で出会った老人の
「時がたてば、なにもかも忘れてしまうのさ!」
 など、実際に耳にした被災者の体験や気持ちを登場人物に語らせる。
 カバーの「波」の字、一部が切り取られてぬいぐるみが見える。カバーを取ると、瓦礫の上にある。流れ着いたものか、慰霊のために置いたものか?
 写真も著者。

【雑誌】 アカヘル 
■ 本の雑誌』 2013.1月号 本の雑誌社 762円+税 
特集 本の雑誌が選ぶ2012年度ベスト10
1位 『人間仮免中』 卯月妙子 イースト・プレス
2位 『紙の月』 角田光代 角川春樹事務所
3位 『ピダパン』 D.L.エヴェレット みすず書房
……

■ 『BRUTUS』 2013.1/1・15合併号 マガジンハウス 600円+税 
特集 男を知る本、女を知る本、212冊。
●男女の謎は、この本が解き明かしてくれます。
●男の理想VS女の妄想!? 男女の溝はマンガで知る。
●男と女のモテ本研究。
●個性派本屋がつくった「男棚」「女棚」。
●ほんとうの男と女はフィクションの中にいる。
●男を知る言葉、女を知る言葉。

【海事】 ゴット 
■ 『はじめてのクルーズ パーフェクトガイドブック』 CRUISE 1月号増刊 海事プレス社 1143円+税
1 クルーズってどんなもの?  体験者が語る初めてのクルーズ、誌上バーチャル体験、船内新聞、ファッション ……
2 はじめてでも乗りやすい客船大紹介!  安心の日本発着、このエリアでデビュー、個性的な船に乗る、日本船に乗る ……
3 クルーズ情報完全ガイド  基本の“き”、なんでもQ&A、船会社リスト、旅行会社

■ 『会社の歩き方 商船三井 2014』 ダイヤモンド社 1200円+税 
 外航海運のリーディングカンパニー「商船三井」を探検。
知る  外航海運は世界の人々のライフライン、航路開拓、世界最大の船隊規模、業界のしくみ、事業内容、業績、歴史 ……
歩く  社内を歩く、最前線の現場、技術開発、安全運行、職場体験。
聞く  社長登場、会社の評判。
入る  待遇、採用。

■ 神戸港カレンダー『Port of Kobe』 入荷 1000円(税込)
神戸みなと総局・神戸港埠頭株式会社・一般社団法人神戸港振興協会
今回はすべて客船の写真。このカレンダーも毎年売り切れます。お早めに。
(平野)