週刊 奥の院 11.30

今週のもっと奥まで〜
■ 花房観音 『女の庭』 幻冬舎 1500円+税
 京都の女子大で同じゼミだった5人の女性。教授の葬儀で12年ぶりに集まる。それぞれヤヤコシイ秘密を抱えている。皆が近況を話す。ゼミでのことを思い出す。教授がインタビューした学者の映像を見て討論をする予定が、流されたビデオは教授の秘密の映像だった。1年後再び集まる。ヤヤコシイ事情はそのまま。絵奈子は会を先に抜け、男と逢う。同席していた里香の夫、学生時代に関係があった。

……
 指が頬に触れるだけで鳥肌が立った。 
 右の指で顔を撫でる。肌を指先で味わうように。
 まぶたを触れられ女は目を開けた。そして目の前の、自分に触れる男をじっと見る。
「泣いてるの?」
「まだ泣いてへん」
「まだってことは、これから?」
「泣かへん」
「泣いてもいいのに」
 男はそう言って、女の顔から手を離しそのまま背中に回して抱き寄せた。
 女は男に抱かれ、自分も男の背に手を回す。指を食い込ませるようにぐっと力を入れる。指先で男を確かめようとするかのように。
「あなたの顔を見たら、いろいろ思い出してしまったんや。ずっと抑えて封印してきたことが」
「僕もそうだ」
「あかんのになぁ。こんなん、あかんのに」
「もういいから」
 男は女の帯を解き始めた。しゅるしゅると音を立て落ちる。
 あかん、あかんのに。自分が辛うなるだけや。
 長襦袢も肌着も脱がされた。
「年とって、おばさんになったやろ」
「どこが。あなたは昔より今のほうが綺麗だよ」
……

 絵奈子の兄は道ならぬ恋で心中。その時絵奈子を支えたのがこの男性だった。教授の助手。あのビデオの秘密、教授と自分との関係も明らかにする。
(平野)