週刊 奥の院 11.28

■ まど・みちお 『人生処方詩集』 詩と絵=まど・みちお 選詩=市河紀子 平凡社コロナ・ブックス 1600円+税  
 まど・みちお(本名・石田道雄、1909年11月山口県生まれ)、103歳。
幼い時は祖父と暮した。10歳で、台湾にいる家族のもとに。台北工業学校在学中、同人誌で詩を発表。24歳頃から新聞・雑誌に投稿。詩は「まど・みちを」、俳句は「石田路汚(みちを)」を名乗る。1934年「コドモノクニ」で特選、選者は北原白秋。43年応召。戦後、婦人画報社(国民国書刊行会)で「チャイルドブック」編集。童謡を書き、52年『ぞうさん』発表。続いて『やぎさん ゆうびん』『ふしぎな ポケット』など。68年初めての詩集『てんぷらぴりぴり』出版。

まど・みちおの詩は、波立つ気持ちをそうっと静めてくれる魔法の言葉だ。ユーモアたっぷりの詩にクスッと笑ったり、世界をスカッと言い当てたような詩にうなずいたりして、楽しもう。(市河)

「こころのシーンに合わせた章立て」(市河)
● 自分が子どもだったことを忘れそうだったら
● さびしかったら
● 生きるのがつらくなってしまったら
● 世の中に不条理を感じたら
● 人と自分をくらべてしまったら
● 笑いたかったら
● ちょっとテツガクしたかったら
● 歳をとったなあと感じたら
● やさしい気持ちになりたかったら
● ねむれない夜に
 
 直筆原稿、ノート、抽象画も掲載。
 現在、高齢者向け病院で療養中。夫人は介護施設に。長男さんが月に1回みちおと一緒に夫人のところに行く。

……共に年齢相応に「トンチンカン夫婦」が進化、最近は少し会話がかみ合わなくなってきている。それでも互いにねぎらいの言葉をかけることは忘れない。
 母は口癖のように言う。「お父さんは優しい人だった」と、なぜか過去形で。   
 石田京(たかし)「見知らぬおじいさんは優しい人だった」

「トンチンカン夫婦」(2001年発表)
満91歳のボケじいさんの私と
満84歳のボケばばあの女房とはこの頃
毎日競争でトンチンカンをやり合っている
私が片足に2枚かさねてはいたまま
もう片足の靴下が見つからないと騒ぐと
彼女は米も入れていない炊飯器に
スイッチ入れてごはんですよと私をよぶ
おかげでさくばく(原文は傍点)たる老夫婦の暮らしに
笑いはたえずこれぞ天の恵みと
図にのって二人ははしゃぎ
明日はまたどんな珍しいトンチンカンを
お恵みいただけるかと胸ふくらませている
かましくも天まで仰ぎ見て…

(平野) 互いのボケを許し、楽しめるのは幸せ。