週刊 奥の院 11.11
■ 『泥酔懺悔』 筑摩書房 1500+税
朝倉かすみ「無理」 中島たい子「下戸の悩み」 瀧波ユカリ「初めての飲み会」 平松洋子「だめなことは、悪いことではない」 室井滋「ザル女という噂」 中野翠「酒瓶にも警告ラベルを」 西加奈子「名女優」 山崎ナオコーラ「ひとりでお酒を飲む理由」 三浦しをん「下戸一族VS飲酒派」 大道珠貴「白に白に白」 角田光代「損だけど」
才色兼備11名。ぐでんぐでんの酔いどれエッセイもあるけど、酒にまつわるお話とお考えください。「Webちくま」連載+角田書下ろし。誰から読むか迷う。初めから順番に読んだらええ。
装画・挿画 浅生ハルミン 挿画 瀧波ユカリ 装丁 大久保伸子
中島たい子は「下戸」。
日本において酒のある場はマジョリティーによって支えられているわけで、人間関係を育む重要なコミュニケーションの場にもなっている。営業にも使えるし、異性との出会いもここで生まれる確立が高いので、下戸だからといってその場を避けていては損をしてしまうことになる。だから、下戸が必ず言う決まり文句に、
「飲めませんけど、酒の席の雰囲気は大好きなんで誘ってくださいね」
というのがある。
そういう酒の席での深刻な問題。割り勘のことではなくて、「酔っていく相手にどうやってついていくか」。こっちが真剣な話をしているのに、相手はどんどん酔っていく。酔いのサインを見極めなければならないが、これが人によって違うから困る。下戸の人はものすごく気を使っているのだよ。
デビュー後、ある賞に落選して残念会。出版社の人たちは飲んで、自分を「せっせと慰めてくれる」。
「お酒だめですよね。何か飲みます? ウーロン茶?」
と聞かれて、昼もろくに食べてなかった私は、さすがにプチッと切れた。ウーロン茶だとぉ?
「んなもん飲まないっ。ごはん! ごはんちょうだい、米つぶのごはん!」
……
後にも先にも、あのときほど気分が良かった酒の席はない。
山崎ナオコーラの言葉がいい。ひとりバーで飲む。
ひとりで、重いドアを開けたい。そして、自分でお金を払いたい。
その「ひとりで〜」という自信が高まってきた頃に、ある男性と仲良くなる。
「この男とは上手く関係を築ける」「相手に頼る関係にならずに済む」と思った。
男は、収入は少ないが、きちんとした仕事に就き、その仕事に誇りを持ち、この仕事しかできないと考えている。欲はない。自分の生活に満足している。そして、必死に社会参加をしている。そのうえ酒に弱い。
ある人の顔を思い浮かべる。おふたりを祝福する。
(平野)
ついでに自分も祝う。11・11はわれら夫婦の30周年でございます。ようもった、よう辛抱した、お互い。