週刊 奥の院 10.11

■ 三浦しをん 『本屋さんで待ち合わせ』 大和書房 1400円+税 
 2006年『まほろ駅前多田便利軒』直木賞
 本年『舟を編む本屋大賞。映画化、来年4月公開。松田龍平宮崎あおい主演。
 書評と本にまつわるエッセイ。
 一日の大半を読書で過ごしている。
 

 私は本を紹介する際に、ひとつの方針を立てている。「ピンとこなかったものについては、最初から黙して語らない(つまり、取りあげてああだこうだ言わない)」だ。
 ひとさまの本に、えらそうにあれこれ言っておきながら、自分が書いている本はどうなんだ。そう問われるとグゥの音も出ない。そこで姑息にも、批判的にならざるをえない本や漫画への感想は、公には表明しないことにしている。また、たとえ私にはピンとこなかったとしても、その本や漫画を好きなかたが当然おられるのだから、わざわざネガティブな感想を表明して、該当の書籍やそれを好きなひとたちを否定する必要も権利もないと考えるからでもある。
 ひとによっていろんな読みかたができるから、本や漫画はおもしろい。

 大人だ。何も争いごとを撒くことはない。

一章 口を開けば、本の話と漫画の話  
女工哀史』に萌える 
読むと猛然と腹が減る 
強風アパートの悲劇 
キュリー夫人の暖房術 他
二章 愉しみも哀しみも本の中に  
時に抗った作家の生――『星新一 一〇〇一話をつくった人』 最相葉月
『タブーと結婚 「源氏物語と阿闍世王コンプレックス論」のほうへ』 藤井貞和 他
三章 本が教えてくれること
『植民地時代の古本屋たち』 神田信悦
『中国名言集 一日一話』 井波律子
裏社会の繊細な魂に迫る――『ヤクザ、わが兄弟』 ヤコブ・ラズ著 母袋夏生訳 他
四章 読まずにわかる『東海道四谷怪談
第一夜 幕末迫る一八二五年に初演 〜 第十二夜 哀しくむなしいラスト
五章 もう少しだけ、本の話                                    
孤独と、優しさと、茶目っ気と。『駆け込み訴え』 太宰治
川の流れのように――『潤一』 井上荒野 他
 
 本文で語りきれなくて、「おわりに」でもまだ「最近読んだ本」について書く。

 本を読んで感じたことを、一人で噛みしめることも、だれかと話しあうこともできる。各人が読みたい本を自由に選択し、自由に味わうことができる。だから、読書は楽しくて奥深い。……

(平野)書名のように、待ち合わせしてください。デートでもいいです。うるさいのは困りますけど。
 紹介しておいて、すんません、私、この人の作品、読んでいません。「好き嫌い」ではなく、ほんとうに、すみません。