週刊 奥の院 9.29

■ 松浦弥太郎 『暮しの手帖日記』 暮しの手帖社 1400円+税  
 1965年東京都中野区生まれ、古書店店主、文筆業。2006年10月『暮しの手帖』編集長就任。
 本書は、毎号の「編集者の手帖」「こんにちはさようなら」と、定期購読付録「編集長日記」を収録。

……『暮しの手帖』は、日々の暮らしの中に生まれる小さな奇跡、そしてささやかな工夫や発案、知恵をみなさまと分かち合い、暮らしを豊かに、美しくする家庭雑誌です。私たち作り手の表情や、手のぬくもり、そして何を想い、何を考え、どういう方法で、『暮しの手帖』を作っているのか、そういうことを誌面を通じて、できるだけみなさまに、お伝えしたいと思いながら、日々仕事をしています。 

……『暮しの手帖』を作ることは、開拓の仕事であります。欲することを自由に試みる正直さと強さを、読者のみなさまから届く声を糧にして歩んでいきます。
 今日もていねいに。
……日々ものづくりをしていて、常々思うのは、そのときの心持ちをできるだけ正直に出そうということです。しかし、それは決して簡単なことではなく、その時々たとえば、自分が疲れていたり、何か他の考えや思いにかられていて、心ここにあらずでいたりすると、胸のそこから聞こえる小さな声、もう少し手をいれよう、もっと別の方法はないだろうか、思い切ってやり直してみよう、という声に素直になれず、すなわち、ものづくりの気力を、ふと失ってしまうのです。心の中には、もっとよくしたい、こうすればよくできるだろうという気持ちがあるのに、その気持ちを汲むことが出来ず、ごまかすというか、なんとなくいろいろなことを言い訳にしてやり過ごしてしまうのです。それを考えると、日々の健康管理は、つくづく大切なことだと思うのです。健康管理は、まず第一に考えなければならない大切な仕事のひとつです。

「編集者の手帖」の文末、2回目から「今日もていねいに」が決まり文句になる。毎日を大切に生きる、ていねいに生きれば工夫と発見がある、という気持ちの表われ。
暮しの手帖社」では、社主である大橋姉妹(88歳と85歳)から20代までの人が、毎日規則正しく一緒に勤務している。
 装画は花森安治のもの。装幀、名久井直子。 
 
『考え方のコツ』(朝日新聞出版・1200円+税)
『100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート』(マガジンハウス)も発売。
(平野)
 NR出版会HP更新。
http://www006.upp.so-net.ne.jp/Nrs/memo2012_10.html
「追悼 出版人をしのぶ」
 元「技術と人間」代表・高橋昇氏が8月9日逝去、享年86歳。
 追悼文、「技術と人間」で20年間ともに歩まれた天笠啓祐さん。