週刊 奥の院 9.3

■ 田中美穂  監修 矢部隆 『亀のひみつ』 WAVE出版 1600円+税
 著者は倉敷の古書店蟲文庫」店主。監修者は愛知学泉大学現代マネジメント学部教授で亀研究者。田中にとっては「憧れの亀先生」、出版元社長の親友という縁で、学術面をサポートしてくれる。 
1 うちの亀  2 亀のひみつ  3 亀を飼う  4 よその亀
 サヨちゃん(オス)他8匹との暮らしの中からわいてきた、たくさんの不思議について考える。
 

 亀は子どもの頃から好きでしたが、飼いはじめた、きっかけというのは、あまりはっきり思い出せません。
 水田や蓮沼の多い土地に育ったため、身のまわりにはメダカやフナ、ザリガニなどとともに亀もあたり前のようにいました。
 当時は、外へ遊びに行くとなれば、女の子だって網とバケツは必須アイテム。毎回、なにかしらつかまえて帰っては、庭にしつらえてもらった水槽代わりのトロ舟(セメントをこねるための容器。プラスチィックの衣装カースを浅くしたようなもの)に写し、飽きるとまた川に戻しに行く。そんなことをひたすら繰り返していたように思います。……

 亀もつかまえた。野性の少女時代? ご幼少時の倉敷には自然がいっぱいあったのでしょうね。

「うわっ、置物かと思ってたら動いた」
ときどきそう言ってお客さんが驚きます。
 わたしの開いている古本屋で数匹の亀を飼っています。そのうちの何匹かは店の中と裏庭とを自由に行き来できるようにしているため、いつのまにか帳場の畳の上に上がってきてくつろいでいることがあるのです。
 畳に亀。店の中に充満する古本屋のにおい同様、わたしはもうすっかり慣れていて、なんとも思わないのですが、傍目にはかなり奇妙な光景に映るよう。
亀たちが帳場と裏庭との間にしつらえた亀専用階段を利用して上がり降りする様子に目を丸くさせる方も少なくありません。ただ、上がるのはともかく、降りるほうは「滑り落ちる」と言ったほうが正しいのですけれども。……

 お客さんの膝に登ろうとする亀もいる。
 季語にある「亀鳴く」について。
 店にいる亀、首を引っ込める時に出る音があるそう。亀には声帯がないので鳴くことはできない。それでも俳人は、「亀鳴くは確かでしょう。田舎の春の夜の情景を想像するだけでのんびりしてきます」と。
 著者の最初の本は「苔」でした。いろいろ「ネタ」を持っている。 

(平野) 
 昨日の国書刊行会フェア」写真はF店長撮影。どうしてもアップできない写真があって、サイズを小さくしたら、でけた。と、思ったら、昨日の写真が入れ替わっている。一枚目はフェアのポスターだったはず。
 ドタマのうっすーい、オケツの賑やかなおっさんは、私。そんなことはどうでもいい。
 同社「40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊」を配布中。ポケミスサイズ。
40年、3000冊超の出版物から著名人が選んだ。
「……出版社名からして、何となくいんちきくさい、いかがわしい感じ……」 
「書物の楽園がここにある」
「……よく続いているなと思う」
「……まだ全然読んでない! いままで人生57年間、何やってたんだ!」
「三冊なんて少な過ぎる。百冊だ百冊」
「……わたしの血の九五%は国書刊行会でできているんですものっ……」