月曜朝礼 新刊案内
【文芸】 クマキ
■ 伊藤計劃×円城塔 『屍者の帝国』 河出書房新社 1800円+税
伊藤は2007年『虐殺器官』でデビュー。09年3月、34歳で逝去。死後、『ハーモニー』が日本SF大賞、星雲賞。英訳版がフィリップ・K・ディック記念賞特別賞受賞。
本書のプロローグ部分30枚が遺された。
まず、わたしの仕事から説明せねばなるまい。 必要なのは、何をおいてもまず、屍体だ。……
未完の絶筆を、円城が芥川賞受賞会見で引き継ぐと宣言。
お話は、
19世紀末――かのウィクター・フランケンシュタインによるクリーチヤ創造から約100年、その技術は全欧に拡散し、いまや「屍者」たちは労働用から軍事用まで幅広く活用されていた。
英国諜報員ジョン・ワトソンは密命を受け軍医としてボンベイにわたり、アフガニスタン奥地へ向かう。
目指すは、「屍体の王国」―― (帯)より
【芸能】 アカヘル
■ 高田渡 『個人的理由』 文遊社 2500円+税
高田は1968年『自衛隊に入ろう』で注目され、69年レコードデビュー。当時は京都山科住まい。18〜20歳までの詩を自費出版した。その詩集を復刊。
ボクの詩
ボクの詩は ボクの詩でありまして ボク以外の誰のモノでもないのです。
(草野心平、金子光晴ら好きな詩人17人の名)
どなたの俘にもなりません
どなたも大好きではありますが
ボクの詩は ボクの詩でありまして ボクが好きになるのは ボクの詩を読んでくださる 方々
個人的理由
非常に 疲れたくおもいまして 非常に 疲れたくおもいまして
朝は真っ赤に充血した 眼をこすりながら 明けるのです。
【文庫】 中公文庫から
■ 武田泰淳 『ニセ札つかいの手記 武田泰淳異色短篇集』 781円+税
生誕100年。
めがね 「ゴジラ」の来る夜 空間の犯罪 女の部屋 白昼の通り魔 誰を方舟に残すか ニセ札つかいの手記
編者あとがき 高崎俊夫
SF、哲学風コント、映画論、幻想小説等々、本書に収められたバラエティに富んだ短篇は、どれをとっても〈戦後文学の巨人・武田泰淳〉という旧態依然のイメージをよい意味で覆すような、読むことの愉悦をたっぷりと味あわせてくれる逸品ぞろいである。
表題作。丸さんは源さんから週に5日1回3枚ずつニセ千円札をもらう。半分のホンモノ「現金」を返さなければならない。なるべく安い買い物をしておつりをもらうよう心がける。しかし、ニセ札を使わずに返しても怒られることはない。
そのニセ札が実はホンモノだとしたら?
■ 菊池夏樹 『菊池寛急逝の夜』 800円+税
2009年白水社より単行本。
著者は寛の孫(長男の子)、1946年生まれ。元文藝春秋編集者、池波正太郎、井上ひさし、松本清張、渡辺淳一ら100名近い作家を担当した。
寛は公職追放中だった。彼のたび重なる浮気に妻は家出して別荘に。彼は胃腸を悪くして2週間寝込む。妻の看病がなく無性に淋しくなる。
菊池寛は、どうすれば妻の包子(かねこ)が抵抗なく帰ってくることができるか、思案した。
意地っ張りな彼女が、何の抵抗もなく帰ってこられる理由が必要だ。……
家族、親類、親しい友人たちを集めた「快気祝い」を開けばいいのだ。
昭和23年3月6日、宴の最中に心臓発作。主治医も出席していたが、午後9時15分臨終。寛の書斎には、題名のない小説の原稿があった。
著者は当時1歳半。祖父について記憶はまったくない。祖母、父とその姉妹、従姉に取材して、生涯を綴る。
(平野)