週刊 奥の院 8.16
■ 『別冊太陽 中上健次 没後二〇年』 監修 高澤秀次 平凡社 2500円+税
中上健次の死 柄谷行人
中上健次の軌跡――その生涯と作品
かくて物語は疾走する――中上文学の世界
松浦寿輝、安藤礼二、中上紀、管啓次郎、津島佑子、リービ英雄、川村湊……
単行本・全集未収録エッセイ「角材の世代の不幸」(『新潮』1968.11月号)
……僕らは敗戦後すぐに生れ、小学校中学校と、平和と民主主義のデマゴーグたる教師たちから新生民主日本のイメージを吹きこまれた世代であり、やっと少年期から出るころにあたって少年期を支えていた民主主義が破産を宣告されている、どうもおかしいと感づきはじめた世代なのである。裏切られた少年期をもつ哀しき世代、としか表現できないように思う。
(評論家に「君らは角材の世代」と言われる、万年筆が角材になるはずはないが9
よし俺は“角材の世代”として他から与えられた少年期を“打倒”して、むきだしの少年期をつかまえようとこのごろおおいにいなおっているのである。たぶんこんな調子だから青年の文学は肉体年齢が中年期に入るころでしか書けないだろうと思う。だがしかしまずそれまでゲバルト(実力行使)でいくしかない。……
■ 『アイデア』9月号 誠文堂新光社 2829円+税
特集 日本オルタナ出版史 1923―1945 ほんとうに美しい本
「オルタナ出版史のためのプログラム」 郡淳一郎
わたしたちはこれから、1923年9月1日の関東大震災から、1945年8月15日の日本敗戦までにおける「もう1つの」出版史を見てゆこうとする。
22年間のタイムラインの起点と終点、そして2012年現在という三つの夏があり、二つ目のヒロシマ・長崎の夏は昨年の福島の春とも二重写しになる。
前の二つの夏において近代日本出版史は2回、強制終了・再起動されたが、そこには現在の出版産業崩壊にあたってわたしたちが取り得る行動の可能性が網羅されている。……
自由民権運動家の最後 宮武外骨
アナーキック・ポーノグファーズ 伊藤竹酔 坂本篤 他
出版社としてのサンボリスト/モダニスト詩人の肖像 北原鉄雄 長谷川巳之吉 他
コスモポリタニズム‐ジャポニズム往還 田丸卓郎 福原信三 他
空想的社会主義あるいは民衆工芸運動 柳宗悦 寿岳文章 他
フレンチ・ジャーマン純粋病患者たち 江川正之 草野貞之 他
趣味人・好事家。蒐集狂コミュニティ 神代種亮 斎藤昌三 他
限定本のハード・コア 五十沢二郎 秋朱之介 他
「オルタナ」って、70年代末から80年代初頭のパンク〜ニューウェイブ・ムーブメントのスピリットが90年代を凌ぐために纏った形態だと僕は思っているんです。この特集で取り上げた31人は職業的出版人というよりは、ミュージシャンがバンドを組んでライブをしたり、レコーディングしたり、「音楽性の違い」で解散したり、再結成したり……そんなふうに離合集散を繰り返して出版物を生み出していた。
そして、この人たちはこれまでの大手出版社を中心にしたオーセンティックな出版文化史や著者だけを対象とする文学史では無視されて、限定本とか発禁本とかの趣味的な文脈でしか語られてこなかった。そういうかれらのスタイルは「オルタナ」と呼ぶしかないものだと思います。
(平野)
「全国書店新聞」8・15 アップ
http://www.shoten.co.jp/nisho/bookstore/shinbun/news.asp?news=2012/08/15
「うみふみ〜」は恒例GF自慢、今回はBFも。