月曜朝礼 新刊案内

【文芸】 クマキ
■ 赤坂真理 『東京プリズン』 河出書房新社 1800円+税 (帯)

《戦争と戦後》のことを書きたい、すべての日本人の問題として書きたいと、私は、十年以上願ってきた。
1964年生まれの私は、戦争を経験した親に育てられた世代の、最後の最後あたりになる。私より年が下になると、今の社会の不具合やその中での個人の生きづらさと、《戦争》や《それによってできた国のかたち》と結びつけて考えることは、難しい。そして、因果がまるでわからないはずだ。だから《戦争》や《戦後》は、それを経験した人たちだけの問題ではない。ある民族や国家が、あれだけの喪失をたった60年や70年で忘れてしまうことは、本当はありえない。それでも忘れたようにふるまえたのは、なぜだったのか、そしてそのことは、日本と日本人に何をもたらしたのか? それらに迫るには、《小説》しかありえなかった。
すべての同胞のために、私は書いた。――赤坂真理(『文藝』2012年秋号より)

 1980年、15歳の私=マリは、単身アメリメイン州 のハイスクールに入れられる。一級下の学年からスタートしたが、校長から本来の学年に戻すための条件を出される。日本について全校生徒の前で発表、それを単位に代えると。発表は5ヵ月後。
 

 日本について何かを発表するためには、まず東京の家に電話して、日本語の本を送ってもらおうと思った。私はなぜか語学は得意で、英語を話すことについては比較的すぐになじめたのだが、まだ私の脳は英文を大量に読めない。そして、文化に関する発表が無難ではないかと当たりをつけた。能だとか、歌舞伎だとか。経済はよくわからなかったし、明治以降の時代を選べば、ほんの数十年前に日本がアメリカとした戦争を私が説明しなければならなくなる。そんなの無理だ。その話は私の国ではタブーだった。戦争で親族を失くした人だって、生徒の中にはいるかもしれなかった。
 しかし、最大の疑問とはそこにあった。
 なぜこんな大きな国と無謀にも戦ったのかは、まだいい。日本人がなぜ、昨日まで敵であったアメリカをこんなにもころりと愛したかだ。それは論理では説明できない。私自身に説明できないのだから他人に対してはもっと説明できないだろう。なのに、感覚的にわかっている自分もいる。
 母もそうだったのだろうか。
(国際電話で祖母に訊く)
「ママはね、東京裁判の通訳をしていたことがあるの」
 祖母は唐突に言った。
……
 私の家には、何か隠されたことがある。
 
 ごく小さなころから、そう感じてきた。
……

 
 赤坂は、編集者を経て95年作家デビュー。2000年『ミューズ』で野間文芸賞、03年『ヴァイブレーター』映画化。この2作、芥川賞候補。
【芸能】 アカヘル
■ なぎら健壱 『五つの赤い風船とフォークの時代』 アノノア 1800円+税
 西岡たかしは1944年5月生まれ。母親が大阪から四国に疎開している時に生れたが、本人は大阪で生まれ育ったという認識。
 
あのねエボクねエ やっぱりね 
大阪ちゅうのが好きでんねん
御堂筋も 心斎橋も
生玉さんも 天神さんも
えべっさんも てっぽう節も
お好み焼きも たこ焼きも
関東だきも ちょぼ焼き
……       『大阪弁

(帯)

西岡少年がギターを手にして55年。
五つの赤い風船結成から45年。
日本のフォーク黎明期から終焉まで、
著者自身の持つ膨大な資料と
西岡たかしなどへの数回に渡る
ロングインタビューにより解き明かされる。
日本フォーク史の決定版。未発表写真も掲載。


【海事】 ゴット
7.6「朝日新聞」夕刊「本屋の棚心」で、ゴットが日本丸/海洋丸』他、船の科学館発行「船の科学館 資料ガイド」を紹介したところ、問い合わせ殺到。只今品切れ多数。しばしお待ちください。


 ヨソサマのイベント
○ 岐阜市 徒然舎 058−337−0444 http://tsurezuresha.net/ 
「善行堂の3年、夏葉社の3年」
8.18(土) 16時より 参加費:1000円  定員:20名
 京都「古書 善行堂」店主・山本善行さんと、ひとり出版社「夏葉社」島田潤一郎さんの対談。それぞれのお仕事、もうすぐ3周年を迎えられます。

(平野)