週刊 奥の院 6.30
■ 『女の二十四時間 ツヴァイク短篇選』 みすず書房 大人の本棚 2800円+税
全3篇収録。表題作は、
世界大戦の十年も前のことですが、当時わたくしはリヴィエラの小さな宿にとまっていました。ところがその宿のわたくしたちの食卓で、ふいにはげしい議論がおきたのです。しかもこれがいきなり血相をかえた口論となり、いや口論だけに留まらず、おたがいに憎みあったり侮辱しあったりもしかねない勢いでした。……
題名から、私はユーモア小説を思い浮かべたのだが、ちゃいました。
ヨーロッパ各地から裕福な人々が集まってくつろいでいる。そのなかのフランス人家族、30代前半の夫人が別の客の若い男性と駆け落ちしてしまう。その男性が来て2日目のこと。
「いつもはただ退屈とのんきな気晴らしとになれきってしまっている人間どもを、興奮のるつぼにまきこむのにまったくおあつらえむきのものでした」
食卓での議論は、大勢は夫人の行動を非難するもの。
[わたくし=ツヴァイク]の意見は、
「長年のあいだ幻滅を感じてきた退屈な結婚生活のおかげで、精力的に触手をのばしてくるものにたいしては、何にでも心の用意ができている女の場合、そういうことはありうる、いや、ありうるどころか大いにありそうなことだ」。
議論沸騰、腕力沙汰になりかねないところを、老イギリス人女性=C夫人が議長のように治めた。その後、客たちが[わたくし]によそよそしくするなか、C夫人は何かと話しかけてくれる。[わたくし]が出立の日を告げると、「二十年来心のなかで思いなやんできたこと」を話したいと言う。客たちとの議論の中で、[わたくし]を信頼してくれた。
彼女は、人生のある時点での「二十四時間」――たった一日――ある男性との触れ合いを語りだす。これまで誰にも語ることのできなかった「魔的(デーモニッシュ)な力」に翻弄された一日の出来事を。
(平野)
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