月曜朝礼 新刊案内

【文芸】 クマキ
■ 望月諒子 『壷の町』 光文社 1800円+税 
 1959年愛媛県生まれ、4歳から神戸在住。現在学習塾経営。デビューは電子出版『神の手』(現在集英社文庫)。2011年『大絵画展』(光文社)で第14回日本ミステリー文学大賞新人賞
(帯)の紹介文。
愛が、町が、人を殺す!
残忍な殺人事件に隠された純愛。
地上げ、心中、放火、震災――。
人々の嘆きと怒りと哀しみを取り込んで
町は生きていく。

 

 神戸の西の端に武蔵台という住宅地がある。ここ数年は地価を落としていたが、かつては「西の芦屋」と銘打って売り出された住宅街だ。その面影を残して、古くからある家はどの家も凝った作りをしていた。……

 ここに越してきて12年になる医者一家・古畑家に不審な男が現われ、そして、火事……。

■ 豊粼由美 『ガタスタ屋の矜持  寄らば斬る!篇』 本の雑誌社 1600円+税 
イラスト:宇田川新聞 装幀:芥陽子
 文学賞選評に対する辛辣な意見でこの人を、“毒舌”とか“怖い人”と思ってしまっているかもしれない。しかし、書評家として信頼できる人。読んで自信を持って人にすすめる、という仕事。外国文学に目が利くのもこの人の特徴。
「書評の基本は、やはり良書を紹介すること」と明解。
本の雑誌』連載(2005・3月号〜2012・5月号)。酷評もあるし、大好きな(誰が?)選考委員批判(誰?)もありまっせ〜。
 それでもね、この人はエライ!
 

 ある作品を酷評した場合、できるだけその後も追いかける。そして、もし当方比的に「酷評した作品よりも良い」と思えたときには、そのことをちゃんと書く。それが、わたしの書評家としての落とし前のつけ方です。

かつて批判した漫才師の新作について、
「わたしには読む責任があります」
と、潔い。
 書名の「ガタスタ屋」、愛読者はご存知でしょうが説明を。
 かのヴァージニア・ウルフが書評家を、「ガター」(抜き取り屋=鋏と糊を手に内容を切って貼って短く書く)、「スタンプ」(鑑定、可・不可の印をつける)と、皮肉った。
 豊粼は、「そのとおりっ!」と誇りをもって答えます。
 

 ただし、ガターとスタンプの順序が逆で、「これは自信をもっておすすめできる」とスタンプを押した本を、その内容がわかるように引用しつつガター(要約)し、自分なりの解釈を加える。

 この仕事も、読書量・教養はもちろん、「覚悟」と「誇り」が必要。「カタギ」の仕事じゃあござんせん。







【芸能】 アカヘル
■ 堀江あき子編 『怪獣博士 大伴昌司「大図解」画報』 河出書房新社 らんぷの本 1800円+税 
 大伴(1936−73)、テレビ局アルバイトから脚本家、ミステリ・SFのライター。『少年マガジン』などの巻頭グラビア図解特集、「怪獣大図鑑」「ウルトラ怪獣入門」などを企画。
 円谷プロの特撮テレビ映画に脚本で参加し、少年雑誌で宣伝。
 

 怪獣の魅力は、円谷プロの特撮技術や物語設定の妙、そしてウルトラマンや怪獣をデザイン造形した多くの美術スタッフの功績も大きい。
 しかし怪獣が子どもたちを魅了した理由は、それだけではなかった。大伴が怪獣をテレビの中だけのフィクションととらえず、どんな能力を持ち、どんな弱点があるかなど、彼らの謎を解明すべく創造力を働かせ、体内を解剖図解して見せたことも魅力の一つであったろう。

■ 大伴昌司 『復刻版 怪獣ウルトラ図鑑』秋田書店 復刊ドットコム 3800円+税)も発売中。 
 

 





7・6〜9・30 東京・弥生美術館にて 「大伴昌司の大図解展 一枚の絵は一万字にまさる」 開催
http://www.enjoytokyo.jp/museum/event/627667/ 






(平野)